103号室と201号室 第28話
今回、暴力的なシーンや気分の悪くなるようなシーンがございます。
苦手な方はお気をつけくださいませ。
男は茜を布団の上へ押さえつけて首元の匂いを嗅ぎながらハァハァと息を荒らげた。
「…やっ!いやっ!」
茜は足をバタバタさせて必死に抵抗するが、ただでさえ体調が悪く動けないのだから男にとっては容易い相手なのだろう。
小さい茜の体をなんて事もないように押さえ、男はニタァッと笑った。
その男の顔を見た瞬間、茜は意識を失った。
「…はぁ〜可愛いなぁ。ねぇ?怖すぎて気絶したの?あははっ!可愛い!」
…ドカッ!
そう言い終わった刹那、男は壁にぶつかっていた。
クロが怒りに震える拳を押さえ、男の前へと歩いていく。
「いってぇ。…なんだ?なんで俺吹っ飛ばされたんだ?」
現状を理解出来ない男の目の前には、目を怒りで赤く染めて黒いモヤのような物に全身を覆われたクロが立っていた。
「ひっ!な、何!?えっ!なんで?」
あまりに突然見た目が変わった事を受け入れられない様子の男は怯えて狼狽えていた。
クロが男の顔を真っ赤な目で覗き込む。
「ひぃっ!…な、なんだよ!お前は一体、なんなんだ!?」
声が裏返りながらも男は恐怖を抑えてクロに向かって言った。
「ナンナンダジャナイ。フザケルナ。」
クロは静かに淡々と話す。
しかし地を這うような低いしゃがれた声を聞いて男は体をガタガタと震わせた。
「お、お前誰だよ!?さっきの子じゃないだろ!?」
「ウルサイ。…お前は許さない。」
そう言いながらクロは男の髪を鷲掴みにした。
「痛いっ!痛い痛い!!やめろっ!」
男は必死に抵抗するがクロの力はとても強く、無理に引っ張ろうとすると髪が全て抜けてしまうんじゃないかと思った程だ。
「ぎゃっ!!やめろって!痛い痛いっ!!」
クロは男が喚くのも気にせず、髪を掴んだまま床に引きずり倒した。そして男の上へ馬乗りになった。
「な、何すんだよ!?降りろよ!」
バチンッ!
目の前がチカチカ光った。
顔面をもの凄い勢いで殴られたようだ。
顔が吹っ飛ばされたかと思った。
「っ!痛っ!!…は?何だよお前!?」
バチンッ!
今度は反対側から殴られる。
平手で殴られているはずなのに威力が凄すぎて意識が飛びそうになる。
「や、やめ!やめろってば!!」
バチンッ!
バチンッ!
バチンッ!
クロは手を止めない。
「…許さない。お前だけは絶対に許さない!」
小さな声で呟きながら、クロは男が気絶してもなおを殴る手を止めなかった。男の顔はパンパンに膨れ上がり真っ赤に腫れていた。
「…ひゅー…ひゅー…」
かろうじて息はしているようだった。




