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ボロアパート  作者: さち
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201号室と103号室 第22話

「ここが俺のウチ…?」

「そうさ。今日からここがアンタの家だ。そして私がだいぶ歳はいってるが親代わりだね。ま、本当の親になれるなんて思っちゃいないが、遠慮なく何でも話したらいい。」

そう言いながらウメさんは俺の頭をまたワシャワシャと撫でた。


俺は嬉しくなったが、恥ずかしくて無言で頷く事しか出来なかった。



……

これがウメさんとの出会いだ。

俺の恩人で親代わり。どうやったって一生敵わない人だ。


「…もしかして気づいてますか?」

恐る恐る聞いてみる。

俺はアイツを飼っていた事がバレていてウメさんが怒っているんじゃないかと思った。


この人は勘が鋭くて俺なんかが誤魔化したってたぶんすぐに気づく。きっともう全てわかっていて言わないだけなんじゃないかと考えた。


「何をだい?…ま、やましい事があるんだろうとは思ってるさ。だがね、人間ってのはした事もしなかった事もいずれきっちり自分に返ってくるもんだ。自分のケツは自分で拭くしかない。……覚悟しておくんだね。」

俺の顔を見ずにウメさんは悲しげにそう話した。


「…わかってます。どんな報いも受けるつもりです。」

やっぱりウメさんに隠し事は出来ないな。

ウメさんの話を聞いて、俺にはそれなりの事がこれから起こるんだろうとわかった。


「そうかい。わかってるならいい。」

静かにそう言ってウメさんは無言で手招きした。

ふと、初めて会った日の事がフラッシュバックする。


(あぁ…どうしてこうなっちまったんだろう。あの時の嬉しかった気持ちをどこに忘れてきたんだ?)

あの日、温かかったウメさんの手の感触が蘇る。


震える手をギュッと握り、腹にグッと力を込める。

「自分のした事のツケは自分で…。」

小さな声で呟いて、ウメさんの元へとゆっくり歩き出した。




……

「さ、行くよ。覚悟はいいね?」

ウメさんは真剣な目で俺を見つめて言う。


「はい。大丈夫です。」

俺は喉をゴクリと鳴らして頷いた。


ウメさんが102号室のドアを開ける。

ギィーッと音を立てると部屋の中が見えた。


…間取りは同じか。

玄関を入ってすぐにキッチンがあり、右手にはトイレと浴室。キッチンの奥には部屋が一部屋ある。

キッチンには子供用の小さな椅子があった。


やっぱりこの家に住んでいたのだろう。

子供の物と女性の物が混在する部屋は、同じ間取りなのに当たり前だが全くの別物だった。


俺は何気なく聞いた。

「なぁ、ウメさん。母親が死んじまってこの家の子供ってこれからどうなんの?」

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