表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ボロアパート  作者: さち
182/270

高木の憂鬱 第3話

「目が覚めたら知らせてくれって…。一体どういう事だ?」

俺は未だに事態を受け入れられず混乱していた。


「あの人に用があるんだ〜。目が覚めたら話したい事があるの。」

少女は普通に話している。…普通に。


「話したい事…?それを俺が聞く訳にはいかない…よな。」

何故俺はここで興味を持ったのか。やはり要らない一言だったらしい…。

再び目の前まで顔を寄せてボソッとアイツは言った。



「…死にたいの?」



あぁ…駄目だ。

俺は逆らえない。というか、逆らったら間違いなく死ぬ。

本能でわかる。これはヤバいやつだ。



「す、すまんっ!つい…。わかったよ。目が覚めたら教えるよ。」

俺は恐怖からギュッと目を瞑ったまま、慌てて謝った。


そこでふと思う。

(ん?…どうやって知らせるんだ?相手は、ばけも…じゃなかった。人間じゃないって言うべきか。たぶん携帯なんて持ってないだろうしな。)


「…聞こえてるわよ。私、一応考えてる事読めるからね。」

イラッとした様子で少女はこちらを睨んでいた。


(マジかよ。頭で考えた事が読めるとか意味がわからんっ!あ、これも聞こえるのか…。)

このままの話の流れはマズいと思い、咄嗟に聞いた。


「…!?す、すまん。いらん事考えてたな。でも、どうやって知らせたらいいんだ?」


「うん。名前呼んで。」

少女は何でもない事のようにアッサリ言う。


「は?名前を呼ぶ?」

俺は思っていた内容と違いすぎてキョトンとして聞き返した。


「そう。私の名前、クロって言うの。だから、呼んで。」

さも当たり前のようにクロという少女はこちらを見ながら言った。


「…クロ?名前、クロっていうのか?」

(何だか犬か猫みたいだな。)と思った。

コイツの正体とはかけ離れた名前のような気がしたが、本人は気に入っているようだ。


嬉しそうに「うん。」と言いながら笑った。

「大切な人がつけてくれた名前なの。いいでしょ?」

無邪気にそう話すクロは普通の少女に見えた。


「あ、あぁ。いい名前だな。」

さっきまでとのギャップが凄すぎて俺の頭はついていかない。

(…なんなんだ?怖かったり、普通の女の子みたいだったり不思議な奴だな。)


「…で、名前を呼んでその後はどうすればいいんだ?」

よくわからないが早くこの話を終わらせるべきだと思った。完全にクロのペースだし、俺は従うしかないのだろう。


「あいつの目が覚めたぞ!って、念じればいいよ。」

「は?それだけ?」

「うん。それだけ。」


そう言ってクロはクスッと笑った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ