102号室と103号室の話 第5話
バレたらヤバい!
思わずギュッと目をつぶる。
あぁ…終わった。
そう覚悟を決めた瞬間。
スッと彼女が離れる気配がした。
助かった…のか?
マジでヤバかった。
自分の心臓の音で周りの音が聞こえない。
その時、なんとも言えない快感が体を突き抜けた。
背中がゾクゾクする。
…もうやめられない。と心底思った。
……
何だか壁の穴が気になって覗こうとした。
その時…
コンコン。誰か来た。
「はぁい。」
郵便屋さんだった。
…ただの穴だよね。そりゃそうだよ。
なんでこんな小さな穴から覗かれてるなんて思ったんだろう?
ホントに疲れてるんだな、私。
お隣さんがそんな事する訳ないじゃない。
そうだよ。
私みたいな女に興味ある訳ない。歳も離れてるし。
はぁ。変な心配して疲れちゃった。
今日は早く寝よう。
……
良かった。バレなかったよな…?
普通はこんな事されるなんて思わないか?
それとも小さい穴だからわからなかったか…?
これってもしかして
…もうバレないんじゃないか?
もしそうなら、これからは何の心配もなくずっと彼女を見ていられる。
…あぁ。今日はもう寝るんだね。
ちゃんと寝付くまで僕が見守っててあげるから。
ふふっ。可愛いなぁ…。
それからも僕が彼女を見つめる時間はドンドン増えていき、ある日ついに越えてはいけない一線を越えようとしていた。
ここがボロアパートだからこそだな。
…簡単に合鍵が作れた。
自分でも、かなりヤバい事に手を出してるという自覚はある。でも、欲望に勝てない。
彼女の全てを知りたいという欲求が、溢れて止まらないんだ。
ははっ。もうここまで来たらどうとでもなれ!
行くとこまで行ってやるよ。
2日前に彼女が電話で話してた。
今日から2泊3日で出張に行くらしい。
…素直にチャンスだと思った。
きっとこういうのをストーカー?って言うんだろうな…。
でも、彼女にさえバレなきゃもう何でも良かった。
俺はすでに犯罪者だからな。
その日の夜。
深夜2時過ぎ、合鍵を使って彼女の部屋へ忍び込む。
ドアがギーッと音を立てて開く。
ドキドキし過ぎて心臓が口から出そうだ。
なるべく音を立てないようにドアを閉め鍵をかける。
懐中電灯で部屋の中を照らす。
「あぁ。同じ造りの部屋なのになんか違う。彼女の香りがする…。」
鼻から深く息を吸い込む。
我ながらやっている事がヤバいと思う。
でも、理性的な事は頭の片隅に浮かんではすぐに消えていく。
部屋を隈なく見ていく。
あぁ。興奮で頭がおかしくなりそうだ。




