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ボロアパート  作者: さち
133/270

追われる男と麻世 中編

「う、うわぁっ!」


キキィーーーーッ!!


そんなに強く踏まなくても止まれたはずなのに驚いて急ブレーキになってしまった。

後ろを走っていた車が激しくクラクションを鳴らす。

パパァーーッ!


ヤ、ヤバかった…。

事故らなくて良かった。


男は恐怖から無意識に耳を押さえている。

車の中をキョロキョロ見回す。


「いない…?なんでだ?今、声したよな?」

絶対に耳元でしたはずなのにその声の主はどこにも見当たらない。

心臓の音がさらに大きく聞こえてキーンと耳鳴りがした。



「ハァハァ…。空耳か。」



そんな男の様子を伺いながら、車の上で麻世が声を出さないように口を手で押さえクスクス笑っていた。

「うわぁっ!だって。あはは!あぁ、おっかしい!」



麻世が笑っている間に信号が変わり、男の車はノロノロと進み始めていた。

そのまま様子を見ていると、車は左側の車線へ移動してある店に入った。


「あら?何処に行くのかしら?」

麻世は自分で車を借りた訳ではないので、男が何をするのかよく分かっていない。



車を駐車場に停めると真っ青な顔をして店へと入っていく。

「あ、あの車は借りてたんだもんね。でも、ここで返してどうするつもりなんだろ?まだアパートまでは結構あるけど?」



フワフワッと下まで降りて、窓の外から店内の様子を伺う。

相変わらず真っ青な顔をしたまま、男は店員に向かってペコペコと頭を下げていた。



「アレは何をしてるのかしら?」

スルッとガラスを抜けてそばまで行き、何を話しているのか聞いてみる。



「すみません!急に具合悪くなっちゃって、運転は難しそうなのでここで返したいんですよ。」

男は申し訳なさそうに理由を説明している。


「同じ系列店ですからお気になさらないで下さい。大丈夫ですよ!それより、顔色悪いですけど大丈夫ですか?」

店員は本気で心配しているようだ。

そりゃそうだ。脂汗をかいて顔面蒼白の奴が車を返しに来たら、店員じゃなくとも心配になる。



さっきのはやりすぎだったかしら…?

そんなに酷く脅かしたつもりはなかったんだけど、アイツ結構ビビりなのね〜!

今朝もちょっと脅かすつもりだったのにこの世の終わりみたいな顔してたもの。


その顔を思い出してクスクス笑っていたら、男が慌てて店を出て行く。


「ホンットにすいませんっ!ありがとうございました!大丈夫ですから。」

何かから逃げるように辺りを注意深く見回しながらドアを出ていった。


さ、そろそろ可哀想だから捕まえますか。

…後を追った。

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