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ボロアパート  作者: さち
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麻世の正体 第3話

男は驚いた様子で少しイラつきながら言う。

「おいおい!まだなんか話す事あんのか?お前、秘密だらけなんだな。」


「仕方ないでしょ。言えない事ばっかりだったのよ。…で、聞くの?聞かないの?」


「ここまで色々聞いたらもう聞くしかねぇんだろ?なんなんだよ。」

「…うん。私の事、今までずっと一人だと思ってたでしょ?」


「…うん?待て待て。意味がわからん!一人だと思ってたってどういう事だ?一人じゃないって事か?」


「そうよ。他にもいるの。」


「…他?何処に?」

「此処に。」


「は?いや、何処だよ!」

「だから此処よ!」

私は自分の胸の辺りをトントンッと指で叩きながら、指し示す。


「何言ってんだ?そこに何がいるって?」

男は心底意味が分からないといった顔であからさまに苛立ちを顔に出した。


私はそんな男の様子をよそにそっとクロに呼びかけた。

「クロ。出てきていいよ。」


「…クロ?」

男は困惑しているようだ。

そりゃそうだ。

何の事か分からないだろう。


「…マヨ イイノ?」

「いいよ。話してみる?」

男は私が何をしているのか本当に分からないのだろう。


「……?」

キョトンとした顔のまま、こちらを黙って見ている。



私はスッと両腕を前に真っ直ぐ伸ばす。

その腕の間から真っ黒い影に似たモノが、モヤのように私の胸の辺りからじんわりと出てくる。


…少しずつ色が濃くなり、じわじわと広がって人型になっていく。



「マヨ?モウイイ?」

「…まだよ。もう少し。」


ここでようやく男が声を絞り出した。

「い、いや!お前、何やってんの!?つーか、ソレなんだよ!」


理解の限界を超えたのか、男はパニックになりかけている。


「シッ!集中してるからもう少し黙ってて。」


「マヨ〜?マダ ダメナノ?」


「あぁっ!もうちょっとだから待って!」



そんなやり取りをしている内に、みるみるその影のようなモノは真っ黒い塊となり、深い深い闇のように濃くなった。

ようやく人の形らしくなって、真っ黒い棒人間に軽く肉がついたようなクロが男の前に初めて姿を見せた。



「…お、おい!終わったのか?」


「フゥッ。…終わったわよ。」


「な、なぁ、コレなんなんだ!?真っ黒で何がなんだか分からねぇぞ!?」

「ちょっと!少し落ち着きなさいよ。これからキチンと説明するから。」


男は急に顔を手で覆って大きく深呼吸をした。

フゥーーーッと息を吐き出し、自分の頬をバチンッと叩いた。


「…よし!いいぞ。話してくれ。」


「だ、大丈夫なの?じゃあ、話すわね。」

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