表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ボロアパート  作者: さち
110/270

麻世と海 第2話

何故こんなにもクロに感情移入しているのか不思議だが、たぶん茜ちゃんに抱いた感情と同じで仲間のような気がしているんだと思う。


小さい頃に親から虐待され死んでしまった私。

…茜ちゃんもそうだった。

クロはそんな茜ちゃんの痛みや苦しみを代わりに受けるために生まれた存在。


きっとクロは今まで楽しい事なんて経験してないんだろうな…。それは私もだけど。

理不尽だな…と思う。

…本当に。






「よしっ。じゃあ、出発するぞ〜。」

「お願いしまーす!」


小さな軽自動車がアパートを出発した。


「で、海って具体的には何処に行くつもりなんだ?」

男が軽快に車を走らせながら私に聞いた。


「あのね、水族館に行きたいのよ。」

「水族館っ!?これから?」

時刻は13時過ぎ。遠出をするには少し遅い時間だもんね。


「そう。遅くまでやってる所見つけたの。」

「…いいけどよ。もしかして、俺一人で入る事になるよな?」

「別に車に待機しててもいいわよ。気まずいでしょ?」

そう言うと男は「う〜ん。」と少し悩んで答えた。


「俺も行くわ。…何か分からんが行った方がいい気がする。ま、気まずいは気まずいけどな。」

「そうなの?別に私は入場料かからないから、気にしなくていいのに。」

「いや、そういう所って一人じゃ寂しいだろ?頭の中だけでも話せたらいいかと思って。」

「…何よ。さっきと違ってずいぶん親切じゃない?どんな心境の変化よ。」


「…実はな。昨日の夜、夢を見たんだよ。」

「…夢?どんな?」

「お前が叩かれて泣いてる夢。」

「…そう。」

「なんだよ!なんかリアクションしろよ。」

「別に。ただの夢でしょ?」

「まぁ、そうなんだけど。なんか妙にリアルな夢でさ。助けてやりたいのに手が出ない夢だったんだよなぁ。」



「その割に今日の朝の態度は酷かったんじゃないの?」

「それは悪かったよ。あり得ない事が起こり過ぎて逃げたくなったんだ。…ごめん。」


「まぁ、いいけど。じゃあ、付き合ってよ!水族館。お金は自分で払ってね?」

「わかってるよ。お前は入場料必要ないんだろ。…ったく。」


そこからは男はしばらく無言で車を走らせた。

私は窓を開けてもらって、風を感じながら外の景色を眺めている。


何故、水族館なのか。

単純に行ってみたかったっていうのもあるけれど、イルカを見てみたかったのだ。


ウメさんと暮らしていた時に、図書館で借りてもらって見たイルカの写真が忘れられなくて。


写真なのにすっごく綺麗で本物を見てみたかった…。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ