201号室と麻世とクロ 第6話
「真っ暗怖いんだ。何処なら安心するの?」
…あぁ。めんどくさい。
なんでこんな奴を。
「部屋に戻りたい。ここはイヤだ。」
あ、そんなんでいいんだ。
じゃあ、協力してもらいますか。
「わかった。部屋に戻るのはいいけど条件がある。これからは私の言うことを何でも聞ける?」
男は一瞬でも怪訝そうな顔をしたが、少し考えて答えた。
「こんな所に閉じ込められるよりはマシだ。…なんでもやるよ。」
お?言ったなぁ〜?
よし。これでこき使ってやれるわ。
「なんでも…ね。約束したからね。……どういう事かわかってるよね?」
私は男の顔を覗き込んで、ニヤァっと笑った。
怯えた顔をしながらも男は「うん。わかった。」と頷いた。
辺りはボンヤリと明るく電球が一つ頭上で光っているくらいの明るさだ。
小さなスポットライトみたい。
「これから貴方に体を返すけど、いつでも私が中にいてどうにでも出来るって事は忘れないでね。」
「わ、わかってる。…それで俺は何をすればいいんだ?」
男は恐る恐る聞いた。
「うん。まずは部屋を掃除しようか。」
「…え?そ、掃除?」
男は面食らったようだ。
たぶんもっと大変な事を要求されると思っていたんだろう。
「そう。掃除。…私、部屋が汚いの嫌いなのよ。少し片付けたけど、なんで私がアンタの部屋を掃除しなきゃならないのよ。自分でしなさい。」
汚いモノでも見るような目で男を見下す。
「す、すいません…。わかりました。」
身に覚えがあるのだろう。
申し訳なさそうに正座して、男は謝った。
「その後の指示は随時、私が出すわ。命令に従わなかったら…その時は、ね?」
「わ、わかってるよ。そんなに念押ししなくても。」
「ふふ。そう?オッケー。…じゃ、元に戻すわよ?」
……体全体がズシっと重さを感じた。
壁に寄りかかって座っている状態だったから、首から背中にかけてが痛い。
ボヤけていた視界がだんだんと戻ってくる…。
自分の手を見ながら、何度か握ってみる。
「あぁ。動く…。良かった。」
少しずつあちこち動かしてみる。
初めは少しぎこちなくて違和感のあった体も、少し動かすうちにピッタリとハマったように落ち着いた。
「もういいでしょ?早く始めなさい。」
頭の中でアイツの声が響く。
「わ、わかってるよ。掃除な。」
頭に直接話しかけられるのってこんな感じなんだな…。
なんか気持ちわり。
「気持ち悪くてごめんなさいね。…アンタの考えてる事も全て共有されてるからそのつもりで。」
「マジかよ…。」




