201号室〜その後〜 後編
次の日、大家の婆ちゃんと一緒に102号室へ向かう。
古いドアがギーッと音を立てて開く。
部屋の作りはやっぱり同じなんだな…。
玄関から入ってすぐに小さい子供が座る椅子が奥に見えた。やっぱり子供いるんじゃねぇか。
「なぁ、大家さん。母親が死んじまってこの家の子供ってこれからどうなんの?」
アイツが戻って来るかはわからんが、一応聞いておかないとな。
「あんた何言ってんだい?この家の子は何年も前に亡くなってるよ。あれを見てごらん。」
婆ちゃんが奥の部屋の隅にあるタンスの上を指さす。
綺麗な布で包まれた小さな箱…?とアイツの写真が置いてある。
「え?…はっ!?ど、どういう事…?」
俺には何がなんだかさっぱり…理解出来ない。
「なんだい。あんた知り合いだったのかい?あの子はね…」
婆ちゃんが何か言ってるが耳に入らない。
だってアイツ昨日まで俺の部屋にいて…普通に飯とか食ってたぞ。
なのに本当は死んでるって…。
つーか、去年の夏頃に見かけたよな?
あの時もう…
え?…じゃあ、アレってなんだったんだ?
昨日のあの黒い腕を思い出した。寒気が止まらない。
俺、もしかしてめちゃくちゃヤバいのを飼ってたんじゃ…
バッ!視線を感じて後ろを振り返る。
玄関ドアから横向きに顔が覗く。
アイツだ…
真っ黒な目をこちらへ向けて笑っている。
「お兄ちゃん。助けてくれてありがと。でももういいよ。……バイバイ。」
身体中がガタガタと震える。
恐怖で身動きが取れない。
ドサッ
「ちょ、ちょっと!あんた、大丈夫かい!?しっかりしな!」婆ちゃんが慌てて駆け寄る。
ガァーンッと頭を殴られたような衝撃を感じた。
と同時にブチンッと何かが切れる音がした。
あ、俺死ぬんだな…。マジか。
…次に目が覚めたのは病院のベッドの上だった。
「絶対死んだと思った。これで済んで良かったのか…?」
医者から説明を聞いた後、一人ベッドで呟く。
脳の血管が切れたらしい。
絶対にアイツのせいだと思っていたから、ちゃんとした病名がついて驚いている。
くも膜下出血だそうだ。
しかし、後遺症が残りこの先俺は車椅子生活になるそうだ。
けれど、これで良かったんだと思う。
原因が何であれ、俺のした事が許される訳がないんだ。
あんなに酷い事をしたのに、まさかありがとうなんて。
ごめんな。
アイツ、母ちゃんと会えたのかな…?
救急車のサイレンが遠のく。
「やっと行ったか。あの男、なんであの人の部屋に入ってたんだ!?……絶対に許さないっ!」




