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ここは猫の母著(虹の橋にはたどり着けない野良)

叫べ

作者: 古都ノ葉

挿絵(By みてみん)



自分は広大な中のひとつの点だった。


 ここがどこで、何で、存在しているかのなんかわからない。



挿絵(By みてみん)


 少し動いてみた。

 うん。

 移動できる。

 少しだけど。


挿絵(By みてみん)


 今度は身体の部位を確かめながら動かしてみる。

 うん。

 移動できる。

 割と自由だ。


 広いと思ったけれど狭いかも知れない。

 確かめよう。

 確かめよう。


挿絵(By みてみん)


 誰かの声が聞こえる。

「汚い」

「え~~、ナニ?」

「ヤダぁ」

 蔑みと侮蔑と嫌悪の視線を感じる。



 ああ、そうか。

 自分は嫌われているのか。


 納得だ。

 そう思うと――硬直して動けなくなった。


 目の前にあるものは通り過ぎる。

 もう周囲も無関心しか与えてはくれない。



 つまり……居なくなればいいんだな。


 ここで独りぼっちになっていることに初めて気がついた


挿絵(By みてみん)


 私は独りだ。


 なんか急に腹が立って来た。

 どす黒い怒りだ。

 確かに不必要かも知れない。でも自分は存在している――したくってしてるわけじゃない。わけじゃないのに……なぜそんな目を向けるのだ。


挿絵(By みてみん)


 何かお前達に悪いことをしたか?

 迷惑なんて掛けた覚えもないのに、私を否定する気か?

 笑うな。

 罵るな。

 無視するな。

 見てくれ。見ろ。見るんだ。


 おい。


 必要がなかったら居いなくなれってか。

 ならば自分が消える前に、私が滅ぶ前に――叫んでやる。


 この世の半分を道連れにしてやる。

 お前らの不幸を祈ってやる。

 そうさ、耳を塞ぎ歩いている奴らに怒りをぶつけてやるんだ。

 なにが悪い。

 なにが悪いんだ。



 あがいてやる。

 命を見せつけてやる。

 残る力、全部使ってめいっぱい叫んでやる。


「私は生きているんだ」


 聞け!

 訊け!

 とにかく聴けっ!



 叫んでやる。

 叫んでやる。

 

「生きたい」

 生きたいのだ、それをどうしてわかってくれない。


 叫んでやる!









 ……そうしたら。


挿絵(By みてみん)



 そうしたら――



挿絵(By みてみん)


 届くものもあるかも知れない。


 最近ちょっとそう思う。  


読んでいただきありがとうございました。


保護猫(正確には捕獲猫)記念日作品です。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 凄く心を動かされる童話だと感じました。 [一言] こんばんは。 猫でしたか! 失礼ながら、最初は嫌厭される系の生物だと思ってました。 牙を剥く挿絵も比喩だとばかり。 でも手と仔猫が出て来…
2022/03/08 22:43 退会済み
管理
[良い点] 黒猫虎さんのご紹介で参りました。 届いた声と救われた命。思わず涙がこみ上げました。 引っ込み思案になりがちな私ですが、勇気をいただけました。 作者様と猫ちゃんに、このさきも幸せがありますよ…
[良い点] とても劇的で野生的で、それでいて優しいお話でした。 きっと、生きる事に必死な剥き出しの命と、それを優しく包み込んだ飼い主さんのやり取りがあったんだろうなぁと思わせてくれる、とても良い作品!…
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