叫べ
自分は広大な中のひとつの点だった。
ここがどこで、何で、存在しているかのなんかわからない。
少し動いてみた。
うん。
移動できる。
少しだけど。
今度は身体の部位を確かめながら動かしてみる。
うん。
移動できる。
割と自由だ。
広いと思ったけれど狭いかも知れない。
確かめよう。
確かめよう。
誰かの声が聞こえる。
「汚い」
「え~~、ナニ?」
「ヤダぁ」
蔑みと侮蔑と嫌悪の視線を感じる。
ああ、そうか。
自分は嫌われているのか。
納得だ。
そう思うと――硬直して動けなくなった。
目の前にあるものは通り過ぎる。
もう周囲も無関心しか与えてはくれない。
つまり……居なくなればいいんだな。
ここで独りぼっちになっていることに初めて気がついた
私は独りだ。
なんか急に腹が立って来た。
どす黒い怒りだ。
確かに不必要かも知れない。でも自分は存在している――したくってしてるわけじゃない。わけじゃないのに……なぜそんな目を向けるのだ。
何かお前達に悪いことをしたか?
迷惑なんて掛けた覚えもないのに、私を否定する気か?
笑うな。
罵るな。
無視するな。
見てくれ。見ろ。見るんだ。
おい。
必要がなかったら居いなくなれってか。
ならば自分が消える前に、私が滅ぶ前に――叫んでやる。
この世の半分を道連れにしてやる。
お前らの不幸を祈ってやる。
そうさ、耳を塞ぎ歩いている奴らに怒りをぶつけてやるんだ。
なにが悪い。
なにが悪いんだ。
あがいてやる。
命を見せつけてやる。
残る力、全部使ってめいっぱい叫んでやる。
「私は生きているんだ」
聞け!
訊け!
とにかく聴けっ!
叫んでやる。
叫んでやる。
「生きたい」
生きたいのだ、それをどうしてわかってくれない。
叫んでやる!
……そうしたら。
そうしたら――
届くものもあるかも知れない。
最近ちょっとそう思う。
読んでいただきありがとうございました。
保護猫(正確には捕獲猫)記念日作品です。