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広い玄関ホールで、王宮から帰ってくる父親を待つソフィア。

部屋でお待ちくださいと何度も言われたが結局落ち着かずここまで来てしまう。

冷えますのでとメイドのマギーがそっとショールをかけてくれた。



──お父様早く…早くお戻りくださいませ…



どれくらいその状態でいたか、馬車が着いたのか外が騒がしくなる。門からの距離ももどかしく足が扉まで進む。急いで執事のロイドが扉を開けるとこちらに歩いてくるスタンリー伯爵が見えた。



「お父様!!」


「ああ私のソフィア!寒いのに!!体調も良くないのに!!さあ、中に入ろう」



すぐさま父親に肩を抱かれ屋敷の中に戻される。玄関の扉が閉まるとスタンリー伯爵は脱いだ外套や手袋をメイドに渡す。



「お父様…あの…」


「とりあえず暖かい部屋で待っていてくれないか。すぐに行くからね。ロイドちょっと一緒に来てくれ」


自室に一旦もどると言って伯爵が階段を上る。ロイドはその後をついて行ってしまった。



国王陛下との謁見を終え戻ってきた父親を急かすのも申し訳ないと、あせる気持ちを抑えながら部屋で待つことにした。


実際にはそれほど長くない時間だったが、今のソフィアにはとてつもなく長く感じる。



──怖い…



ぎゅっと手を握り最悪の結果を想像し、震える身体をまっすぐに保つのが難しい。




ノック音の後ロイドが扉を開け着替えたスタンリー伯爵が入ってくる。

ロイドは中に入らず扉の外で待つ。

ソフィアと一緒に部屋にいたマギーもロイドの合図で外に出る。



「愛しいソフィア。待たせてすまない」


「いえ、お父様もお疲れなのに申し訳ございません」



いつも通り娘に甘い父親の声に少しほっとするも、机を挟んで目の前に座った父親の表情が何を語ろうとしているのか読めず…



──早く聞きたい…でも…



少し震えながらも聞き逃さないよう顔をあげる不安そうなソフィアを優しく見つめながら、スタンリー伯爵は静かに話かける。


「陛下にお会いしてきたよ」


「はい…」








「結論から言うと…何も変わらない」


「え?」


想像していたどの答えとも違う結果に、意味が分からず気の抜けた返事をかえす。



「…ソフィアは殿下のことが好きかい?」


またさらに想像を超える質問がきて、ぐるぐると考えが回る。



──これはどういうこと…?質問の意図が分からない…けれど…



今なぜこの質問なのかと思うがその疑問を無理やり抑え、そこは間違いなく揺るがない答えをはっきりと答える。


「…はい。大好きです!」




そう答えるよね、大好きな人の話を我慢するのは悲しい!隠さず話して欲しいと頼んだ君だから…スタンリー伯爵は目を閉じて緊張していた背中を少し丸める。




『婚約の約束はこのまま継続させる』


『その必要がございますか?殿下はソフィアをどうするおつもりで…。なぜ継続なのかお聞きしても?』



不敬にあたるのは重々承知の上聞き返す。



『余も息子が可愛いのだ。後少し時間をやってくれないか…フレデリック』


くくくっと笑いながら国王は続ける


『エドワードはソフィア嬢に認めてもらいたいそうだ』




『エドワード殿下が…ですか?』


逆なのではと考えてたら


『後少しで良い。このままで』




決して大きくも力を込めた声でもないが反論は許されない陛下の威厳ある声で言われ、分かりましたと小さく頷くしかなかった。






「お父様…?」


「あっ…すまない。うん、ソフィアが殿下を好き…な間は…っ…今まで通りの…ぐっ…」


「お父様泣かないでください。殿下との婚約の約束は本当に今まで通りなのですね?」



愛する娘がいなくなることを想像して泣き出した父親を、いつもの事なので軽くあしらいながらソフィアは確認する。



「私殿下のお傍に…まだ諦めなくてもいいんですね?」


「え?あーーーうん、そうだね…うん…でもソフィアは今のままで…いいかな」




──フレデリック、そなたの口からいらぬことは言うなよ。



涙を拭きながら陛下からの言葉を思い出し、娘と目線を合わさないように斜め上を見ながら曖昧に答えた。



「ほら、もう遅いし早く寝なさい。マギーを呼ぼう」




スタンリー伯爵はソフィアにゆっくりおやすみと軽く抱きしめてから部屋を後にする。



マギーは手馴れた順にソフィアの寝支度をして、よかったですねと嬉しそうに言って部屋を出て行った。





──本当に私…まだ希望を持っていてもいいのかしら…殿下に辛そうなお顔をさせてしまったのに…でもまだ機会をもらえるのならもう間違えることはできない。次こそ殿下に認めてもらわないと!!



自分に足りないところはどこだろう…とあれもこれもと考えていたらいつの間にか眠りについていた。










朝いつもよりは少し遅めに目が覚める。


今日はマギーが休みなので別のメイドがソフィアの用意を手伝った。全ての支度がすみ食堂まできたが、スタンリー伯爵は既に屋敷を出ていた為1人で朝食を食べる。

食後、昨夜考えたあれやこれをどれから学んで行こうかと考えていたら、よろしいですか?とロイドが部屋にきた。



「先程届きました。殿下からでございます」


と花束と手紙を渡される。


「殿下から?」



今までももらったことはあるが、お茶会に絡めてが多かったので少し驚く。




──いい匂い



ふふっと笑いがもれる。花束をメイドに渡し飾ってもらっている間に封筒を開け中の手紙を確認する。



「…!!」



手紙を持つ手が震えた。

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