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避難準備

先生から注意の言葉は飛んだけれど、 私を始め窓際の生徒は皆窓の外から見える光景に釘付けになっていた。


必死の形相で逃げる者、それを追いかける者、追いかけてくるものに対して、攻撃魔法を放つ者。


魔法は火属性のものに見えた。

追いかける生徒に当たり、大きな爆発音が響き、火炎が生徒を包み込む。

まともに喰らえばただではすまない威力、しかし喰らった生徒は気にする風もなく歩を進め、次の魔法を詠唱しようとする生徒にのし掛かった。

2人は地面に倒れ、もつれ合っている。


「いい加減にしなさい!卒業を取り消されたいのですか!?」

女教師が金切り声をあげる。


あともう少しで授業が終わるところではあるけれども、もう限界だ。

私は手をあげると、先生に気分が悪いので保健室へ行きますと声をかけ、教室を脱出した。


急ぎ足で保健室にたどり着くと、扉が少し開いていてそこから中の様子が伺えた。

話し声が聞こえてくる。


「痛ってー!」

「動かない。回復できないでしょう。」

「あの野郎、急に噛んできやがって、、、ああゆう場合、処分はどうなるんだ?」

「さあね、別の先生が生徒指導室で事情を聞いてるわ。私はあまりわからないけど、だいたいこういう事件があると 2週間から3週間くらいは学校に来ないように言われるかもしれないわね。」


暴れる生徒は拘束魔法を使って縛りあげられた挙句、生徒指導室でこってり絞られるのがこの学園での常識だ。


私は生徒指導室へと歩を進めた。

私の中で危険信号が警鐘を鳴らしているが、確認しない訳には行かない。

生徒指導室にたどり着くと、指導が行われているはずだと言うのに、辺りは随分静かだった。


生徒指導室のドアが少し開いていて、そこから中を覗き込んでみると生徒指導で有名な先生が、仰向けで倒れているのが目に入った。


あの先生を怒らせると拘束魔法で縛られ、 動きが取れなくなった所で永遠に詰られる。


そんな面倒な先生なのだが、今日はずいぶんおとなしい。

そして、仰向けで寝ている先生の首筋辺りに血の跡があるように見える。


私はそれだけ確認すると、すぐさまその場を立ち去った。 このドアは開けてはならない。





アリスが立ち去ってからしばらくした後、別の生徒がこの生徒指導室を訪れた。

教師が倒れているのを目撃した生徒は、 教師を介抱しようと教室に入っていった

、、、生徒指導室から悲鳴が上がった。




私は歩きながら、 これからどうするかを考えていた。

似ている、、、昨日見た夢と状況が酷似している。

登校数の少ない教室、暴れる生徒、、、あの夢も、始まりはそんな感じだった。


しかし、この世界ならそんなに大きな問題にならないかもしれない。

この世界には元々魔物がいる、戦いの職に就いている人も多い。

アレが夢の世界のものと同レベルなら、あっという間に鎮圧されるかもしれない。


私は様子を見る事にした。

もし夢のようになるなら、1日2日で一気に状況が動く可能性がある。

まあ1日2日サボったくらいなら、卒業取り消しにはならないだろう。


私は購買へ移動すると、携帯食料や水袋、小型ナイフなど、サバイバル出来るものを最低限買った。

この学園の生徒は冒険者や戦闘職希望の生徒の実地研修の為に、幅広く商品を揃えてくれている。


授業中だったので少々難癖をつけられたけれども、何とか購入する事ができた。


そして、私が籠城する為に目指すのは、学園寮の自分の部屋だ。

私は昔から心配性で、手袋とか、毒消しとか、火打石とか、色々なものを買い集めるのが癖になっていた。

その中に、きっと役立つものもあるはず、、、


部屋に戻ったら風邪って事にして2日程籠城しよう。

何事も無ければ良い、私が心配性過ぎただけって事で終わりだからだ。


その時の私は完全に油断していた。

目的のものを手に入れて、後は自分の部屋へ戻るだけだと、、、移動中が最も危ないとよく知っていた筈なのに。


次の廊下の十字路を右にまがれば寮まで後少し、という所で、ソレは私の目の前に現れた。


「ア゛ァァァ、、、」


着ているものは間違いなくこの学園の生徒のものだ、、、本来緑色の制服は、何らかの液体を被って黒く変色している。

シャツが赤くなっているから、あの制服についている液体も赤いのかな?と現実逃避気味な思考をしてしまった。


生徒の目は充血し、だらしなく開いた口からは涎と血が滴っている。

口からは何事かを発している様に聞こえるが、特に意味のある言葉にはなっていない。

手を前に突き出し、ヨタヨタと歩いているソレが急にこちらを向いた。


目が合ってしまった。

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