死因:バナナ
本人はオリジナルのつもりですが、
アイデアが既出だったら、ごめんなさい。
ドンドンドンドン!!
窓を叩く音が聞こえてくる。
私ももうここで終わりかな。
部屋の隅にうずくまって私、本田雫は自分の死期を悟った。
窓の外には大量の 死人の群れ。
死んでいるくせに、偉そうにこっちを見下ろしてやがる。
こっちはできるだけ目につかないように縮こまっってるってのに。
今私を見つけてこの部屋、学校の科学準備室に群がっている死人の群れは、いわゆるゾンビというやつ。
この世界がおかしくなって、 およそ3ヶ月。
私にしては保った方だと言いたいところだけれども、 ついにここで万事休すの状態になってしまった。
それでも、他の人のようにさっさと諦めて死んでやるつもりはない。
私は、手元に残ったお手製の武器を構えた。
窓が割れ、ゾンビが一体部屋の中に侵入しようとしている。
こんな時に火炎瓶の一本でもあれば、 もしくは、 チェーンソーでもあれば、 状況を切り抜けられたかもしれない。
でも全て、ここまでに使い切ってしまった。
私は持っていた釘バットを窓にもたれているゾンビの頭に振り下ろした。
鈍い音がしてゾンビの頭が陥没する。
ゾンビを一匹仕留めた所で、私はあたりを今一度見回した。
ゾンビどもは開いた窓から入ろうとして一箇所に固まっている。
その分反対側の窓の方は比較的手薄な状態になっていた。
私はそちらへ駆け寄るとバットを振り下ろす。
ガシャンと音がして、派手に砕けたガラスが辺りに飛び散った。
すかさず出来た隙間から身を躍らせる。
砕けたガラスで頬を少し切ってしまったが、命には代えられない。
ここから追いかけてくるゾンビを 突き放すように、一気に廊下を駆け抜ける。
物音を聞きつけて、いろんな教室からゾンビがわらわらと飛び出してきた。
私は昇り階段をどんどん上っていく。
下り階段の方にはもうゾンビがわんさかいる状態だった。
今の騒ぎで、あたりのゾンビ達がみんなこの学校内に侵入したことだろう。
これで屋上まで逃げ、防災用にセットしてあるシューターを使って無人になったグラウンドから逃げてやる。
屋上に上りきると、ひたすらシューターの方向へ向かって駆け抜けていく。
鍵を掛けている暇は、無い。
物陰から一際足の速いゾンビが 襲いかかってきた。
そいつに向かって釘バットを投げつけると、 私は後ろも見ずにシューターに入り込んだ。
もうこれで私が持っている武器は何もない。 どこかで調達しなければと思いながら、 グラウンドまで降りていく。
幸いなことに、グラウンドにゾンビはほとんどいなかった。
これはラッキーなと思いながら、 素早くしかし物音を立てぬようにグラウンドを駆け抜けていく。
できれば近くの民家にでも潜り込んで、何かしら食料と武器を調達しないとと思いながら道路を渡ろうとしたところで、視界の隅にアレがいることに気づいた。
あれは通常のゾンビよりも素早く、大きく、そして硬い。
人を見つけたら容赦なく突っ込んでくる。
もしかして、ちょっと前に火炎瓶で 焼いてやったやつじゃないか?
撒いたと思っていたのに、執念深いヤツめ……。私は小さく舌打ちをすると、一気にスピードを上げ、全速力で近くの民家の方へ走っていく。
あっちも唸り声を上げながら猛然と突っ込んでくる。
スピードは当然あちらの方が早い。
なんとか間に合ってくれという気持ちで、一歩一歩と進んでいく。
一歩がものすごくゆっくりに感じられる。
なんとか先に玄関にたどり着いたと思った瞬間。
その玄関に置いてあったバナナの皮を踏んで足がつるっと滑った。
こなくそ、とドアノブを掴む、と思ったらそのドアノブもガタが来ていたらしくポロッと取れた 。
掴むところのなくなった私は、 玄関の階段の角に頭から突っ込んだ。
ゴスッという音と感触とともに、 目の前に雷が光ったような感覚があった。
まさかこんな世界でバナナに滑って転んで死んでしまうなんて。
ゾンビに殺されるよりは、マシなんだろうかと思いながら、 私の意識は闇に沈んでいった。