君との話
君は今何処にいるのだろうか。
君がいなくなったあの日、僕は君と喧嘩した。君の制止も無視して、僕はその場を走り去った。
それが、君との最後の会話になるとは思わなかった。
君はあの時どんな顔をしていた?思い出せない。いや、よく見ていなかった。
あの時のこと、謝るから、ごめん、ごめんなさい、だから、お願いだよ。
君と、会いたいよ……
「……、」
何か聞こえた気がして立ち止まり振り返る。
「どうしたんだ?」
俺の様子に気がついて、相棒が話しかけてくる。
「…いや、何でもないよ」
「そうか?」
そう返すと相棒は不思議そうな顔をしたけど、すぐに前を向いて歩き出す。その後に俺も続いた。
先ほどのことなど、もう気にしていなかった。
いつからこの旅を始めたのだったか。もう朧気だ。
確か、何もかもに絶望して『もう死んでしまいたい』そう思って森の中をさ迷っていたら相棒に会って、相棒についていくことにしたんだっけ?
うん、確かそうだった。多分。
でも、絶望していたのは覚えている。何もかもに絶望して涙すらでなくて、森の中に入って行った。
相棒がいなかったら俺は死んでたんだろうなあ。
うん、本当。お前がいてくれて良かったよ。
ありがとう、相棒。
俺がこいつと会ったのは、ある冬の日のことだった。
こいつは森の中をさ迷っていた。青い顔を通り越して白い顔をして、ただ歩いていた。目的もなく、ただ一人で。
だから俺は話しかけた。あんな顔をしたガキを放っておけるわけがねぇ。
話しかけて近づいて気づいた。こいつには傷が多かった。普通のガキが負わないような沢山の傷。
これは駄目だと思った。だから、俺は言った。
「俺と一緒に、旅をしないか」
こいつは俺の顔を見上げて、ゆっくりと頷いた。
それからずっと一緒に旅をしている。旅をしている内にこいつの目に光が戻ってきた。それから表情も豊かになっていき、笑顔でいるのが多くなった。良かった、本当に。
ある日こいつは俺のこと『相棒』と呼ぶようになった。全く、何に影響されたんだか。まあだが、悪い気はしないので訂正はしなかった。
一人旅もなかなか楽しかったが、こいつとの二人旅も存外悪かない。
……さて、次は何処に行こうか。