見つめる視線
ーーあれから2人でいる毎日が過ぎ、あっという間に1年が経つ。
誕生日には水族館に行き、海月や海の生き物に癒され、プレゼント交換をした。
ある時は、みちるの作った弁当で花見をした。
夏になり、夏休みは2人で花火を見て、一緒に課題をしたし、涼みに海に行った。
秋はそろそろ高校受験に向けて考えつつ、文化祭の日は図書館で2人してサボる。
この時はちょっとだけ2人だけの世界でいられたような気がする。
そして冬、高校は家から近い、翠川高等学校を志望。
公立高校だし、あまりギチギチな雰囲気じゃなかったから、ここにした。
クリスマスは2人で過ごし、ショートケーキを食べ、正月は俺の家族もみちるの家に集まって、いつもより盛大に騒いだ。
結果、2人して合格。
そして、春ーー
入学式。
担任「入学おめでとう。そして、式お疲れさん。
担任の柳井だ。担当教科は数学だ。
よろしくなー。」
軽そうなセンセーだな。
ま、うるさく言ってくるヤツよりマシか。
柳井「まー、この後自己紹介をしてもらうが、
その後は明日以降の流れを説明して解散だ」
じゃ、自己紹介~
と、柳井の力が抜ける指示で、安斉ってヤツから自己紹介が始まった。
か行だから順番早いんだよなー。
「…神崎優也。青南中から来ました。
よろしくお願いします」
てか、人数多いな。何人だぁ?
40人近くかよ。
…お、そろそろみちるの番じゃん
「…都月みちる。青南中から来ました。
よろしく。」
緊張してんなー。
今日の帰りにアイス買ってやるか。
この時間もそろそろ終わるし…
柳井「じゃー、全員終わったことだし、明日のことを
話すぞー。
プリント配るから、ちゃんと持って帰れよ」
明日はオリエンテーションと、午後から健康診断。
授業は明後日からか。…たりぃな。
柳井「いーかぁ、お前ら。
とりあえず1年間、よろしくなー。
じゃー、きりーつ、れーぃ」
号令まで気が抜けるヤツだな。
さ、帰るかー。
「みちる、帰るぞ」
「ゆーや、アイス」
やっぱなー。
「買ってやるよ。ほら、行くぞ」
みちるを促し、教室を出ていく。
途中で女子が声をかけようとしていたが、スルーだ。
悪ぃけど、下心まる見え~。
だけど、俺は気づかなかった。
教室を出ていく俺たちを、三日月の形をとった目で見つめる3人の姿があったことを。