奇跡の確率
優也の言葉で、私の迷いは波に攫われた砂の城のようにボロボロと崩れてなくなった。
現金な私。
でも、優也のいない学校なんて、行く価値ないし。
悩むだけ、時間のムダ。
あ、優也、機嫌良い。
今年の誕生日ケーキは絶対チョコって思ってた。
そしてそれは優也も。
考えてることなんて、解らない方が難しい。
そして、その事実が木漏れ日みたいに心地いい。
本当に前世があるとしたら、私達は本当に双子だったのかもね?
4月20日。
優也と私の誕生日。
元々近所で仲のいい両親達の子供が、同じ病院で10分弱の差で生まれた。
奇跡の確率って知ってる?
人が生まれる確率は1/1400兆なんだって。
でも、私と優也が同じ日に生まれる確率はもっともっと奇跡の確率になるんだと思う。
だから、私と優也は在るべくして生まれてきたんだって、優也と2人で話した。
優也は当たり前だろ?って顔してたけど、本当は嬉しくて、照れ隠ししてただけなのを知ってる。
だから、誕生日は私達にとって、とても大切な日。
唯一、世界に感謝する日だ。
「ゆーや。」
「解ってるって。水族館だろ?」
ニヤリと悪戯顔で笑う優也
「楽しみ。
海月、飼いたい」
「海月なー。
おばさん、生き物ダメだもんなー。
…いつかな。」
いつか。
それは、未来の約束。
嬉しい約束だ。
みちるの表情が明るい。
誕生日が近いからだろう。
俺達は誕生日をとても大切な日と思ってる。
あれは奇跡の確率の話をしてからだったかーー。
誕生日はルーチンがある。
もちろん必ず一緒に過ごすことだが、俺達の好きな水族館に行くこと。
これは毎年行くけど、飽きない。
俺もだけど、みちるは特に海月が好きだ。
ふわふわゆらゆら漂う姿に癒される。
その後は、プレゼントをお互いに買いに行って、最後に誕生日ケーキをホールで1個買って帰る。
ちなみに、ケーキで喧嘩したことはない。
毎回意見が一致するからなー。
俺んちに帰るとお互いの両親が集まってっから、皆で祝って終わり。
これが誕生日の日のルーチン。
決まってる行動だけど、その事に酷く安心するんだ。
今年もみちると、いつもの誕生日が過ごせるって。
「楽しみ。
海月、飼いたい。」
「海月なー。
おばさん、生き物ダメだもんなー。
…いつかな。」
いつか。
決して曖昧にするための、投げやりな言葉ではなく。
未来の約束の言葉。
みちるは当然気づいてる。
俺達の当たり前の未来を見てる言葉だと。
注)奇跡の確率の話はインターネットより得た情報です。
ご了承ください