2人だけの世界が欲しい
「…」
高校の話を出したら、みちるが黙った。
でも、みちるが考えていることは、手に取るようにわかる。
だって、俺はみちるの はんぶんだから。
俺もみちるも口数は少ないし、愛想も良くない。
お互いのことにしか興味ないから周りの人間は大抵引いていく。
それでも俺やみちるに言い寄ってくる人間は、大抵下心がある人間が多い。
みちるも解ってるはずなのに、いちいち心を少しだけ許して、そして傷つく。それを繰り返す。
大方、おばさんの心配事を気にしてるんだろうけど、いい加減諦めればいいのに。
どうせ高校も俺と同じ所を受験するか、しないかで迷ってんだろうけど、俺らが離れられるわけないのに。
頭1つ分小さいみちるの頭を見下ろす。
「みちる。」
「…ん。」
みちるが俺を見たから、しっかりと目を合わせて言う
「周りは関係ねぇだろ。
お前は、俺と来い」
「うん」
よし、解決。
この顔は吹っ切ったな。
後は、どこの高校に行くか、だなー。
俺もみちるも特に部活やってねぇから、そのこだわりはねぇし、近くの高校でいーかな。
「ゆーや。」
「あー、そーいやもうすぐだな。
俺らの誕生日。」
「ん。
今年のケーキは「チョコがいい」」
2人でハモる。
こんなことはしょっちゅうだ。
ハモったことでみちるが微かに笑う。
まるで、桜の花弁が舞うこの景色のように、それは優しく綺麗な笑みだった。
みちるといると楽だ。
自分が自分のままで居られる。
少しも偽らなくていい。
こんなにピタッとハマる人間なんて、みちる以外居ないだろう。
なのに、周りは俺達の関係を否定する。
自分の下心を押し付けてくる。
大人になって、家を出たら、こんな煩わしい思いをせず、みちると2人で生きていけるだろうか。
ーー時々、無性にみちると2人だけの世界が欲しくなる。