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第1章-2.5 リヒトとアレクシス

今回は番外編です。

 王都の見回りと言えば魔法街~! というアレクさんに従って、俺は商業区画にある魔法街に来ている。

 魔法街と言うだけあって、店は魔法商店ばかり。魔道書や魔導具があちらこちらで売っていて、いろいろな魔力が入り乱れている。慣れないと、酔っちゃいそうなくらい。

 俺の故郷は田舎町だったから、魔法具は生活用品くらいしか売ってなかったから、街中でこんなに魔力が溢れているのはなんだか新鮮だ。

 キョロキョロとせわしなく歩いていると、後ろからおかしげに笑う声が聞こえる。

「あっははは、おっかし~。もしかして初めてなのー?」

「う。どうせ田舎者ですよっ!」

 むう。そりゃ、王都の人にとってはこんなの当たり前かもしれないけど。俺にとっては珍しいものばっかなんだ。

「あはは、ごめんって~」

「別に怒ってないっ」

「ごめんごめん~」

 アレクさんの言い方、ちっとも謝ってるように聞こえない。それでも憎めないのは人柄なのかな。ずるいというか、羨ましいというか……。

「リーくんはー、マリーちゃんと来たかったんだよね~」

「え!?」

 な、なんで急にそんなこと言われてるの!?

「組み分けしたとき、しょぼーんってしてたじゃん」

「う……」

 ば、バレてる。俺、ポーカーフェイス頑張ったのに。

 別にマリウスがいないと嫌とかそういうわけじゃないけど、最初にグリムファクトに来たときからずっと一緒だったから、いないと寂しいというか。マリウスと一緒に研修と聞いて、結構嬉しかったんだ。

「ね、なんでそんなにマリーちゃんに懐いてるの?」

「え?」

「マリーちゃんはこれまで何回も新人の研修とかやってるけど、新人くんには評判悪いんだよね、マリーちゃんってば」

「なんで? 優しかったし、可愛かったよ?」

 最初はあんまり笑わなくて怖かったけど、すぐに笑うようになったし。ちょっと変なことを言っても怒らないし、いろいろ教えてくれたし。

 それに、俺が笑ったときに釣られて笑うときの顔が、ほんとに嬉しそうで可愛いんだ。

「でも、黒いでしょ~? 黒は悪魔の色だって嫌がる人もいるじゃん?」

「そんなの、マリウスにはどうしようもないことじゃん」

「そう思わない人もいるって、俺たちはよく知ってるじゃん」

「……」

 確かにその通りだ。

 他の人より魔法が上手く使えて、金髪金目は光の加護を受ける証だと言われて。幼い頃から、光の御子として特別扱いを受けてきた。そんなことを俺が望んでいないなんてお構いなしに。

 俺でさえそうだったのだ。悪魔の印と言われる黒髪を持つマリウスがひどい目に遭っていただろうということは簡単に想像できる。

 実際、マリウスは外でフードを外したがらない。つまり、そういうことなんだろう。

「……でも、俺はマリウスが好きだよ。黒い髪だって、怖いとか嫌だとか、思わないよ。むしろ綺麗だと思う」

「いいんじゃないー? 色で決めつけるなんて馬鹿らしいって、俺たちはよく知ってるからね~」

 アレクさんはにこにこと笑っている。大人が子供を見守るような眼差しなのは、ちょっと納得いかないけど。

「マリーちゃんもぼっちだからね~。お友達ができるのはいいことだよ~」

「なんか、含むような言い方だなあ」

「気にしない気にしなーい。さて、魔法商店に入ろっか~。俺の行きつけのお店を紹介してあげるよ~」

「むー」


 アレクさんの行きつけだという魔法商店は、魔法街の中でも奥まったところにあった。普通の人は大通り近くの店で買い物をするので、奥に来れば来るほど魔法使い御用達の店になるらしい。

「やっほーおばあちゃん。来たよ~」

「おや、また来たのかい。知らない顔もいるね」

「この子はリーくん。うちの新人くんだよ~」

「そうかい。ま、機会があったら使っておくれ」

「リヒトです。よろしくお願いします」

 店番のおばあちゃんは、黒いローブをまとったいかにも魔女って感じの人だ。一般人は怖がって近寄らなさそう。

 店内を見回してみると、そこそこ強い魔力を感じる魔道書と、杖やタクトなどの魔法媒体が並んでいる。魔法具もあるけど、どれも戦闘用だ。

「ねーおばあちゃん、何か面白い話ない~?」

「面白い話ねえ。そんなもんがポンポン手に入ってたまるかい」

「え~」

「でもま、面白くなりそうな話はあるよ。最近、強い魔道書の話を聞きたがる男がいてね。魔法災厄を起こすくらい強力な魔道書の研究をしてるんだとさ」

「何それ。魔法災厄って、なんか不穏じゃない?」

「魔法使いが強い魔道書を調べたがるのはそんなに珍しいことじゃないけどね~。研究者ならなおさらでしょ。魔法災厄級ってのは、確かに不穏だけど~」

「うちにはそれらしいのは来てないけど、他の店には来てるかもね。気になるなら聞いてみたらどうだい」

「うん、そうするー。ありがと~、おばーちゃん」

「礼なんかいらんから、何か買っていっておくれ」

「今度ね~」

 おばあちゃんの眼力をものともせず、アレクさんはおばあちゃんに手を振ると店を出て行ってしまった。俺はおばあちゃんの「何か買え」オーラを受けながら、そそくさと店を出る。この店、次に来るの、勇気がいるな……。


 おばあちゃんのアドバイス通り、俺たちは魔法商店の店で、魔道書を調べる男について聞き込みをしてみた。実際にその男と会ったという店員さんから聞いた話だと、「濃茶の髪の男の人。旅人の格好をしていて、かっこよかった」らしい。

 魔法街にその男が来るようになったのは三日前から。たいてい何か魔道書を買っていく。ついでのように、王都周辺の地理についても話を聞いていくそうだけど。

「何がしたいんだろ、この人」

「さあ~? そういうの考えるのはヴィルとかマリーちゃんの方が得意だろうし、任せちゃおう~」

「そ、それでいいの……?」

「適材適所って言うでしょ~?」

「う、うーん……」

 だからって任せきりもどうかと思う。俺は、ちゃんと考えよう。役に立たないかも知れないけど……。

 ゴーンゴーンゴーン、と鐘の音が鳴り響く。お昼の時間だ。

「あ、お昼だ。ヴィルたちと合流しよう~」

「わーい、お昼だ!」

 マリウスたちの方はうまくいってるのかな。危ない目に遭ってないといいけど。

 午後はマリウスと一緒に行動できるといいな。……無理かな。


書き溜め分がそろそろなくなるのと、コミティア用原稿にとりかからなければならないので、しばらく更新が遅くなります。

このままフェードアウトしないように頑張りますので、お待ちいただけると嬉しいです。

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