5-1
5話
瞼が日光の槍に刺されてはね開く。
おもむろで無愛想な光が僕を包み、思わず涙が滲む。
歪む視界に時計を捉える、12時。
大した時間寝れてもいないが、体も頭も正常に動く。
もともと睡眠が長い方ではない、この程度であれば余裕だ。
──さて、しかし。
「暇……だな。」
暇、という単語を呟いて奇妙な感覚に襲われる。
「いつからだろう。」
大学生になってから?大学受験に差し掛かってから?或いはもっと前から?
いや、違うな。
僕は暇という感情を、或いは孤独という名かもしれないソレを。
5年、そう、テツに出会ったその日その日以来初めて感じた。
「ぎゃくもどり。」
正しく逆行。
テツは失い居場所も無くした。
独りになった僕に与えられるのはいつも冷たい部屋と溢れる時間だけ。
「何かしないと。」
何をしたい訳でもない。
何をする必要がある訳でもない。
しかし、何かをしていることだけが孤独を慰める方法だと心得ていた。
手始めに料理をした。
──まあまあ。
続いて掃除をした。
──時間はかからなかった。
更に課題レポートを仕上げた。
──もう提出も出来ないのに。
しかし、どうして、孤独は癒えなかった。
冷たいドアノブに手を伸ばす。
その先にある〝他人〟が仮初の安寧を与えてくれると思っていたから。
かくして僕は扉を開いた。
その先に待つ仕組まれた運命の名も知らずに。