3-3
「──Ciao:クロユリ」
放たれた凶は、空を貫く。
枉ることなき禍の弾。
黒百合、そう呼ばれた狂銃は仮面を糾弾する。
「寤──」
が、
眼前までソレが迫ったその時、忽然と。
ヤツは消えた。
「……対象再度消失。」
朽梨の呟きが静寂に谺響する。
ツンと張り詰めた空気が、ようやく、世界からの許しを経て融和を果たす。
くる、くるくる、くる。
ぎゅる?ぎゅるぎゅ、るるぎゅ。
その凍り付いた光景が融けるのと時を同じくして。
僕自身も世界に融けるような感覚に襲われる。
「意味が、わからな、い。」
「意味が、意味が。」
「わかるはず、ない。」
足は竦んでいた。
震えていた。
しかし、立った。
なんのために?
逃げるために。
なにから?
今起こった、げんじつから。
どうして?
───こわいから。
走った、走った、あてもなく。
走った、走った、果てもなく。
暗闇を駆けた。
現実に怯えながら。
追憶に目を背けながら。
気付けば、見知らぬ場所、交番の前に立っていた。
足は震えていた。
先と同じか?
わからない。
しかし、震えていた。
「助けて、」
「助けて、ください。」
這いずり、扉を叩く。
「助けてください───」
警察官の奇妙な目線を浴びて、なぜか嗤えた。
嗤いが、僕を、
「──こんばんは、人を殺しました。」