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ゆっくり、一歩一歩、地面に足跡がはっきり残るように歩いた。
己が意気を損なわないように。
駅までの徒歩5分がやけに長くて、脚が泣く。
いや、或いは恐怖に啼いているだけかもしれないが。
ああ、戻れない。
この先は、戻れない。
ICカードを握る手は細かく震えて。
電車を待つ3分、指を噛んだ。
孤独に、恐怖に、絶望に、向き合うのを遅らせるために。
指からは血が出た。
しかし、その方が落ち着いた。
がた、んごと、ん。
揺れて揺れて、今。
持ってきた水を喉に通す。
通す、通す。
気付けばペットボトルの中身は無くなっていた。
「───」
それでも声が出ない。
究極と言えるほどに乾ききったその喉。
水分500mlを摂取してなお砂漠化を止めぬ喉。
生唾さえ、塊になって流れ落ちていく気がする。
死地に赴くとは、こういうことか。
──安心して、私がいるわ。
その言葉が、どれほど重いものであったか。
「今度は、今度は」
君を護る?君を救う?
僕にそんなに大口はないけれど。
これだけは、言おう
「君の所へ行くよ」




