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6話
インターホンが、軽く鳴る。
「忙しいんだ…後にしてくれ。」
もう一度、鳴る。
「うるさいなぁ。」
出ればいいんだろ、と戸を開く。
「お待たせしました!●●運輸です!」
「──あ、ノートパソコン。」
「はい!サインの方お願いします!」
やけに明るい青年だった。
僕は言われるがままに彼から手渡されたペンでサインを記し、感謝を述べる。
「ありがとうございましたー!」
少しだけ、気が軽くなった。
彼の元気を噛み締める。
「すいません、少しだけ、少しだけあなたの明るさを借ります───名前も知らないお兄さん。」
時刻は20時。
奴の告げた木更津公園までここから電車で20分、徒歩で30分。
ざっくりと所要時間をまとめれば1時間というところだ。
奴は23時に朽梨が仮面と出逢うと言った。
なら少なくともそれより前にはいないといけない。
僕に出来ることは彼女を止めることだけだから。
準備を重ねたリュックを背負って、気持ちを入れ直す。
死ぬかもしれない、でも、関係ない。
そして僕は靴を履いた。




