冬の夜空
風が冷たい。耳がビリビリする。季節に疎くなったのはいつの頃だろうか。
街はすっかりクリスマスムードだ。赤、緑、金、銀……装飾が目に飛び込んでくる。
「あぁ、そうか。もう冬なのか」
つぶやいてみたが、雑踏に掻き消され、人ごみに紛れていく。
偶然前を通り過ぎた女の子が付き合っていた子の後ろ姿に似ていた。
あの娘は元気だろうか。
学生時代、付き合っていた彼女を思い出す。
天真爛漫。夏のひまわりのような女の子だった。
そんな子が寒いこの冬をどう過ごしているのか気になった。
携帯にはもう機種変更をしてしまって彼女の連絡先はもう、ない。
夏祭りに一緒に行ったこと覚えているかな。
焼きそばを食べたこと。
その姿を見られて後日同級生にからかわれたこと。
花火で告白されてそのまま付き合ったこと。
冬の景色を見ているとあの暑い夏が遠くに感じる。
暑い日中を過ごして夕方涼しくなる夏の一日。
薄暗くなった空に祭りの提灯に明かりが灯って、にぎわう人の声。遠くのひぐらし、屋台のにおい。
それらを思い出し電車に乗る。
そういえば――
近くに中学の同窓会がある。
(彼女も来るだろうか……)
携帯のメール画面を起こし開く。
「参加」と入力する。そのまま送信。
同窓会の当日は残業があり、終えたのは午後の9時だった。会場は会社から駅2つ分の所だ。
あわてて電車に乗り込むと焦る気持ちと戸惑いが出てきた。緊張で何度か行くのを躊躇ったが行くことにした。
居酒屋の2階の個室。
開けてみるとどっと賑わっていた。
「おぉー、真壁! 久しぶりだなぁ」
懐かしい山田が出迎えてくれた。
「北見さん、待ってるぞ」
「?」
案内されて席に座ると彼女―北見さんの隣りだった。
「ひさしぶり。元気にしてた?」
彼女は柔らかく微笑んだ。
「うん……まぁ」
「そっかー、もう8年も経ってるんだよね、早っ」
当時よりもフランクになっていた彼女は楽しそうに話し出した。
会社の同僚の話、友達の結婚式……
どれも彼女が「今」を活き活きと過ごしている話だった。
「―って、あ、もう終わりか」
幹事の呼び声があってそこでお開きとなった。
「真壁君、2次会行く?」
「いや、明日も早いからやめておくよ」
「じゃあ、私もやめよっかな」
そのまま2人で駅まで歩くことになった。
「真壁君って、東町に住んでるの?」
「うん。今は1人暮らし」
「へぇー。実は私、結婚するんだ」
「いきなりだね」
「そういきなり」
ははっと彼女は笑うと
「結婚式、来てよ」
「? なんで?」
「まぁ、いいから連絡先交換してさ」
「えー、俺やだよ」
「じゃあいいや、うん。わかった。真壁君も元気でね、私こっちだから」
俺の行き先の反対を指差すと彼女は小さく手を振り小走りで駆けていった。
「またねーーー」
彼女のでかい声が聞こえて振り返ると笑顔の彼女がいた。
「ふふっ彼女らしい」
彼女がこの冬どう過ごしたのか分かった気がした。
軽く手を振り、俺は歩き出す。
彼女とは違う未来の先を。




