訓練生の教育と、影で動き出す組織
私はハルバードと思い出話をした後眠りについて、翌朝目が覚める
私の目的はさっさと訓練生どもを戦えるようにする事
本日の訓練内容は槍の持ち方と、グリップのフォーム、そして騎乗時の振り方と突きかた
私はまずドラゴンたち抜きで訓練生達に槍を持たせる
「まず、普通地上で使う槍だが、ドラゴンライダーや竜騎士たちは持ち方が少し違う、槍は通常地面に構えた時は後ろ脚で踏ん張り前足をかがませる、姿勢だが、ドラゴンライダーや竜騎士は座ったうえで振らねばならない、そのため脇で挟む事が何より重要になる、地上で使う槍の場合は回したり、下がったりするが、そんな事できないドラゴンライダーは正確の脇で挟み、動く対象に的確に突く
私は生徒たちを座らせて、「よし、脇でしっかり挟んだな?そのまま脇で挟んだまま、片手で刺突してみろ、片方はドラゴンの手綱を握っていると想定して、槍を片手で刺突してみろ」
刺突するが脇で挟んでいるぶん安定する
生徒たちも自分が正確に突ける事に驚いていた。
そして私はボールを取り出した、木製のボールだ
「よし、これを投げるから槍の先端で突けるようになるまで訓練だ」
私が投げると最初は当たらなかった
しょげる訓練生に「あんまし気にしなくていい、これは竜騎士が上級になっても必ず目を慣らすために事前戦闘準備で必ず行う訓練なんだ、急がずとも、毎日続ければ・・・ハルバード!!」
ハルバードが口にくわえたボールを二個ひょいひょいと投げる
一個でよかったんだけど・・・まぁ私には止まって見えるしいいか
二個ボールを摸擬ようの木製槍で突いて粉砕する
レベルガが驚愕して「ボールが・・・粉砕した!?」
私は苦笑いして「まぁ、ここまでできるようになれとは言わないから、安心して、とりあえず突いて当たるようになるまで、特訓!!10個投げたら順番交代!!さっ!!時間はないよ!!」
これで各自が自分で鍛錬に励める
私は座ってハルバードを撫でて「鱗にお手入れでもする?」
ハルバードは頷いて「あぁ、綺麗だと思うが頼む」
私は先がフック状になった道具を取り出す、ドラゴンの鱗と鱗の間に詰まったゴミを取り出すための道具、ドラゴン達は鱗の隙間は自分で清掃できないため、人間が手を加えるしか方法がない、だから野生のドラゴン達は以外と体臭が地域によっては強烈だったりする。
私は鱗の隙間にフックをかけてコリコリするとボロボロと土埃がこぼれる
ハルバードは目を閉じ、体を私に委ねている、これは室内にいるドラゴンの決まりなのである
鱗の隙間の清掃が終わると体をブルブル震わせて、残りの土を落とすと。
今度は訓練生ドラゴン達にも物流指導を教えてあげる、訓練生達はドラゴンにまたがり摸擬戦できるようになるまで、あの訓練で腕力とスタミナをつけてもらわないと
その間にも連れてきたドラゴン達の教育を始める
「よし・・・じゃあ、重りを装備して飛行する訓練よ、荷物はたいてい重くなる、思い時翼にかかる負荷は多い、だからコツとしてはいかに上手く上昇気流をつかみ無駄な羽ばたきを減らすかによって飛行距離はうんと変わってくる」
ドラゴン達は頷いて私は借り物の重りを持ってくる
ドラゴン達の積載量は500kgから1t未満と言われている
私はまず訓練として600kgの重さを背負わせる、地上に立っているだけなら皆涼しい顔をしている
ちなみに私は地上なら2tまで片手で持てる
ドラゴン達はその状態で飛行する、思った以上に苦戦しているようだ、そりゃそうだ、空を飛ぶのに重量はダイレクトにくる疲れだ、30分毎に10分の休憩を入れて、夕方まで飛ばし続ける
訓練生ドラゴン達は息が上がっている
「ぜぇぜぇ・・・つ、つらい・・・」ハルバスが呟く
アルタイルは地面に倒れ「もう駄目・・・」
メライアも無口になり息が上がっていてフーッフーッと息を整えている
私はこのために国に頼んでドラゴン専用のお風呂を訓練場に作ってもらっていた。
さすがにここまで屋外な所で私も脱ぐわけにはいかないので、いつものように愛でてあげる事はできないが、物流ドラゴン達は翼に相当疲労が溜まる。これをほぐす事も管理者としてもブリーダーとしてしも大事な仕事、私も遊びではないのでハルバードの時みたい全身マッサージなどはせず翼や飛行制御で使う尻尾などを中心にほぐす
ハルバスが「あぁ・・・気持ちいい・・・フニュウ・・・」
と低いドラゴンの地声が出る、この地声は気分が高揚すると高くなる傾向にある
ハルバードやロベルトの時は気分が高揚するツボを押したり触ったりしていたりしたのだが、単に簡単なマッサージではこの程度の声しか出さない
次にアルタイルもほぐすが「うへぇ・・・気持ちいい・・・ミュウ・・・」
あんまりいい反応がなくてどんどん渋くなっていく私の顔
メライアに関しては無口のまま気持ちよさそうに顔を緩やかにしているだけ
私の眉間にしわが現れ始める
すべてドラゴン達をほぐすと最後にコメント
「つまらない」
ハルバードが我慢できずに大笑いする
私が渋い顔のままハルバードをづかづか追い回す
ハルバードは全力で逃げ始めて、逃げ回る
私が疲れた頃には夕方で訓練生達も訓練を終了させる
「先生!10個中3個当たるようになりました!!」
ほう最初でそれだけできるとはセンスは悪くないようだ
平均的に見ても2個以上は当てられるようになっている
これが100発100中になる竜騎士は私ぐらいだ、ドラゴンの目を持っているという反則の技があるからだが。
普通は20個のボールが平均的に命中率70%から90までで合格だ。
訓練生達にはそれから、ドラゴンとの息の合わせ方や、旋回時の姿勢や、指示など高等技術を教える事から始めるとしよう。
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その晩私はローリンス国王に呼び出された
ドラグニールと違い、ダンディな感じの国王が椅子に座って深刻そうな顔をしている
「なんでごさいましょうか国王」
国王は私に一つの魔水晶を渡してきた、しかもこれはビデオカメラのようにその時を記録できる、貴重な魔水晶だった。
私が触れて映像を見ると驚いた
竜騎士同士の戦闘記録だ、そこに映っていたのは、下半身がドラゴンでドラゴンの首から上にかけて人間の上半身があるドラゴンだ
「ま、まさか・・・これは・・・」
ローリンスの国王はため息を吐いて「エメラルダ、そなたがこれを見ればなんだか分かるな?」
私は深刻そうにうなずいて「はい・・・ドラゴンとの血液共有で起きる・・・部分的融合の一種・・・ブラッドフュージョン現象ですね」
国王は頷いて「これを意図的に引き起こす集団が確認されて、そいつらがこの近隣に居る事なのだ」
私は驚いて言葉が詰まった「意図的に!?なぜそんな事を・・・」
国王は首を振り「分からぬ・・・ただこれがとても危険な実験をして何かを企んでいるのは確かだ、私の兵を偵察に向かわせて施設の位置の割り出しを急いでいる、ドラゴンについてローリンスはあまりにも疎いそのためエメラルダ、貴公が向かってくれる事を頼む、これは命令ではなくお願いだ。ドラグニールの重要な人物を危険な目にあわすのだ、十分な報酬を期待してくれて構わん」
私は頷いて「ドラゴンの保身や安全にかかわる事です、率先してやらせていただきます」
私はこの現象をよく知っている。対象のドラゴンの血を人間が取り込み、ドラゴンに接触する事で一時的に私のコネクトと疑似的な事ができる。
だが引き換えに短時間で、ドラゴン側からの浸食が始まり、結果的に分離できず、部分的に人間どドラゴンが融合してしまう現象。
さっきのような姿の者をドラゴンタウルという魔獣に分類されるようになる。
ドラゴンタウルは危険で、理性はなくなり、異なる異性のドラゴンを襲い、無理に交配を強要する。
そして生まれる子供は魔獣として生まれる事になる。それがドラッグルと言われる、竜人と似た姿の魔獣となる、人間の知力を持ち、言葉も話せるが気性が荒く、街や村を意図的に襲う集団ハンターとなる事が多い。
ドラッグルはしかも生んだドラゴンタウルを崇拝する習性があり、ドラゴン達を捕らえようとする動きがみられるため。ドラゴン達の数を減らす事になもなりかねない危険な種。
ゆえに人間がドラゴンの血を取り込む事は医学的には良しとしても、竜騎士にはタブー中のタブーなのだ。
もし今回の件が本当に意図的にやっているとなれば許せない。
実験として融合させられる人もドラゴンも望んでなるわけじゃない、私は何かの事故でそうなっただけだと信じたかった
氏名:フェロニクス
年齢:12歳(死去)
性別:オス
種族:ブラックドラゴン
詳細:エメラルダの最初のパートナーであり、性能はハルバードを上回る。だがある事件をきっかけに命を落とす。エメラルダの事を愛し、当時はドラゴンと人間が付き合う事は偏見と差別で批判を受けたが、ドラゴンと人が愛し合う事は別に悪い事ではないとエメラルダの協力で主張して、人間とドラゴンの結婚を合法的な物にした。
エメラルダが風呂場でドラゴンと付き合うのは、フェロニクスが気持ちの良い所を教えたからであるらしい。