夜の超速便
私は満足した表情で家に帰る
今日は本当の報告書が書ける!それは久々の事だったので嬉しい気分を抑えられなかった
鍵を急いで開け、レザージャケットを脱ぎ、テーブルに座り羽ペンを回してインクに浸け
スラスラと書き上げていく
メライア:訓練12自力でのコース飛行 :合格
詳細:チーム編隊は今まで成績最下位だったアルタイルにも動じず、上手くサポートしていた。隊を任せても大丈夫なレベルだと推測できるが、それ以上にサポート適正が高く思える。
今後も引き続き能力の引き上げと、訓練を行わせる
ハルバス:訓練12自力でのコース飛行 :合格
詳細:やはりアルタイルが指揮をすることに不満の声を上げた。だが作戦にしっかりと参加した事は良しとする。しかし途中、隊を意図的に乱す行為が確認された。アルタイルの活躍が気に食わなかったと思われる。厳重注意をし、それでも改善の意向が見られない場合、訓練を中断して養成所に送り返す事も検討せざる負えない。
アルタイル:訓練12自力でのコース飛行 :合格
詳細:アルタイルは学習能力で得た知識をうまく引き出し、訓練を無事終了させた。まだまだ自信が無いところが見られるが、それは時間が解決してくれると思われる。彼は今後は期待できる存在になるだろう
私は満足の報告書を見上げて封筒に入れ、封蝋 (封筒閉じに使われる蝋を溶かして使うスタンプ)をし、明日郵便ポストに入れるつもりだ
私は今夜は昨日のシチューの余りがあるので今夜は比較的暇だ、何をしようかと思っていると、買ったばかりの新しい本がテーブルに置いてある。気になって手に取りタイトルを見る
「この世界における転生の可能性について」という、私自身転生者であるため
この本が気になり買ってしまった物だった。最近は忙しくて手つかずだったため改めて読む
この世界における転生は、1000年前に現れた。伝説の騎士から始まる
騎士は一人で戦いの術を教え、驚く兵器と文明を教えた、言われている。
騎士はどうしてこれだけの知識を持ち合わせているかと問われると
「転生者」と名乗ったそうだ。転生者、つまり前世は進んだ文明に生存していて、何らかのきっかけで死亡時に魂か何かが転移したのではないかと推測される。
この世界においても転生者が現れる事があり得るかもしれない。文明を大きく進める人物は早急に国へ報告する事が望まれる。
気になった記述はこの程度で、後は彼が伝えたといわれるバリスタやクロスボウ、そして鍛冶屋の基本など様々な事がこと細かく記されている。
私はこれらの事はよく知っているのでどうでもよくなったとき、ドアがノックされる
慌てて本をソファの下に隠す
「私ったら、なんで隠してんだろ・・・」無意識にやった行動に疑問しながらもドアを開ける
相手はオレンジ色の鱗のドラゴンの郵便屋さんだ、頭に郵便〒マークを付けた帽子に黒いバック
まるで昔の日本の郵便屋さんがドラゴン化したような感じだ。
夜の時間帯は危険だから配達しないはずのドラゴン便が来るなんて、どうしたんだろ?
通常ドラゴン便は急いで使う要件や、手紙を使うのに便利だが、夜間は着地時の視界が悪く事故の発生率も高いため、中止にしている。
ドラゴンは嬉しそう小さな長3封筒を渡して呟く
「いやぁ、ドラゴンと話せるエメラルダさんに届けられて僕幸せです~」
私はそのホンワカしたドラゴンの和む顔に戸惑いつつも、気になった質問をする
「どうしてこんな時間に配達を?危なくない?」
ドラゴンは頷いて「はい~・・・それが急を要する以来でして・・・侯爵様直々の命令と今日中には届けてくれってご要望でして」
あのクソ親父・・・ドラゴンに危険な仕事はさせるなとあれほど・・・
私はこめかみに怒りマークを浮かべながら拳を強く握っていると、ドラゴンはホンワカして
「でも危険な見返りがエメラルダさんとお話しできる事がうれしいのでお気になさらずに~」
相手はこう言うが私はなんかこのまま返してしまうのも申し訳ないので
男のドラゴンならどうしてあげれば喜ぶが考えた末
「これでサービスできたかな?」
ドラゴンの頬にキスをしてあげる
郵便屋のドラゴンはそのまま気絶してしまった。
私は頭を抱えてやっちまったーと思い
「っちゃー・・・これは刺激が強すぎたか・・・やっぱり男と女ってわからないなぁ」
私は頭をポリポリ書いて目覚めるまで側でたき火して体が冷えないようにした
しばらくすると起き上がってキョロキョロして「ッハ!?私は何を!?」
隣で私がにっこり笑って「気絶してたのよ」
郵便屋のドラゴンはかしこまって「すみません・・・それにしても何で気絶したんでしょうね」
すると思い出したかのように顔が温度計が急上昇するように赤くなり
「っあ!アワワワワ!?わ、わたくし、エ、エ、エエラメラルダさんにキ、キスされた!?」
私は戸惑いつつも苦笑いして「せっかく苦労してきてくれたんだから、お礼ぐらいしなきゃと思ってね」
郵便屋のドラゴンは恥ずかしそうにした後自信がある顔で「我が一生悔いなし!!」
アレ・・・どこかで聞いたようなセリフだな・・・まあいいか
私はとりあえず郵便屋のドラゴンに「今日はもう遅いし、この時間だときっと、ランディング(ドラゴン達が離着陸に使う広場)のたいまつも消されちゃってるだろうから、今日は私の家に泊まっていきなよ」
郵便屋のドラゴンは頷いて申し訳なさそうに「すみません・・・気絶する事が無ければすぐに戻れたんですが・・・私たったら気絶するなんて情けないドラゴンですね」
「そんな事ないわ、仕事を熱心になるドラゴンじゃないとこんな真夜中に飛ばないわよ」
郵便屋のドラゴンの顔が溶けるように照れて「そんなに褒められると仕事頑張っちゃいますよぉ」
きっと人間の男だったら殴り倒したくなる顔だが、私のドラゴン愛で補正されて可愛く見える
私は手紙の内容をドラゴンのせいで忘れていて早速開ける事にした
ドラゴン便使って送るんであれば、結構緊急な要件のはず
私が愛用して使うバタフライナイフを回して取り出し
手紙の封を開けて取り出す
「エメラルダ、急な要件ですまない、お前に頼みたい仕事がある、現在教育中のドラゴン達をお前の護衛訓練として連れ、王都へ戻ってきてほしい、明日の昼までには到着できるようにしてもらいたい、頼んだぞ。 ガルブレス・リュイナス
あのクソ親父・・・仕事中断してまで新しい仕事させるだとぉ・・・?
私の怒りは郵便屋のドラゴンの可愛い寝顔で徐々に癒されるのであった
そして私はドラゴンに毛布などを被せ、一晩明かすのであった
氏名:ハルバス
種族:レッドドラゴン
年齢:5歳
性別:雄
詳細:エメラルダが育てる隊の中でも優れたエリートドラゴン、学習能力も訓練も滞り無くこなす優れたドラゴン、アルタイルを影で応援していて、面倒見も良いお兄さん的立ち位置