アルタイルの試練
翌朝私は、朝食を済ませ、騎乗用のレザージャケットを羽織り、家を出て走る。
畑に囲まれた何もない道、そこを元気よく走る。
今日の訓練のアルタイルの結果が気になってうずうずする。
ドラゴンの訓練場の広場へと足を運ぶと、既にメライア、ハルバス、アルタイルの三体は整列している
ハルバスの顔は何か言いたげそうな顔をしてモゾモゾしている。
大体想像がつく、アルタイルが自信に満ちた顔で訓練に臨む姿勢だからだ。
メライアはアルタイルの顔を見て安心して、どこか嬉しそうな顔つきをしている。
メライアは自信でやる気があるドラゴンは好む傾向のドラゴンのため、
アルタイルに期待しているのだろう
ハルバスは戸惑いを隠せず我慢できずに口を開いてしまう。
「アルタイルがこんな顔してるのなんでだ?」
メライアに問いかけるとメライアは、嬉しそうな表情を崩さず
「きっと昨日何かあったのさ、でも今のアイツはスゲェ事する顔だ、ハルバスお前も将来の事ばかり考えてボーっとしているとアルタイルに抜かれるぞ」
ハルバスはあざ笑うように笑い「ハッ!そんな事ありえるわけねぇよ!最下位が何やっても結局は同じさ!!」
アルタイルはそんなハルバスの嫌がらせの行動を無視して姿勢を崩さず、
訓練に真っ直ぐな瞳で挑む態度だ
ハルバスはそんなアルタイルが気に入らないのか舌打ちして、私を方を向く
私はドラゴン達に声をあげ訓練内容を説明する
「今回は訓練No12、指定コースされたコースを正確に飛ぶという、道具を使った高度な訓練になる!」本来11の訓練が終わって初めて受けられる訓練だが私はあえてアルタイルに試練を渡す事にした。商人達にとってドラゴンは自分で判断して運べると思う人も多い、人員が不足していたり、リード役が居ない場合、近くの運搬等はドラゴンに任せる事が多い。運送屋や運ぶドラゴン達にとってこれは大事な訓練だ、大体半数のドラゴン達は、ここで苦戦する。
ハルバスは驚いて私に文句を言う「ハァ!?教官!コイツはまともに編隊飛行すらできないお荷物だぜ!?しかもリードが居ない中でやるなんて無理言い過ぎだぜ!!」
私はハルバスをあざ笑うように笑い、皮肉を言う
「どうした?難しい訓練ばかり所望する自信過剰なお前が急に難しい訓練を言われたら、できないと逃げるのか?」
ハルバスは地面を強く踏み「やってやろうじゃねぇか!」やる気の火は十分に点いた。
メライアはクールに笑い「それでこそ教官殿だ」
アルタイルの自信の満ちた顔に変化はない、私はハルバードの所へ向かうついいでに、アルタイルの小耳に「お前がリードしてやれ、昨日と違うところを見せてやれ」
アルタイルは力強く頷き、敬礼して「はい!教官殿!!」
メライアもさっきの私たちの会話を聞いたのか、私が離れた直後に
「期待しているぞ」と呟いていた、やはりメライアも優しい奴だった
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そして広場で装備を背負わせる、リード役には腕に方位磁石が装備されている、皮でできたバンドの真ん中に、丸い水晶がついていて中で方角を示す針が液体漬けにされている。
方角を見定め、判断して動くため、かなりリード役には負担がかかるが、今のアルタイルにならできる
アルタイルが腕に方位磁石を持っている事に気が付くとハルバスは大反対した
「お、おいおい!何かの冗談だろ!?使えないこいつが俺たちのリード役!?この中のエースはメライアだろ!?メライアも何か言えよ!!」
メライアはハルバスの意見など聞いてないそぶりで「依存はありません教官殿」
ハルバスはメライアを焦った顔で見て私を睨みつける
私はハルバスを睨み返し「あぁ、そうだ、文句があるなら飛んだあとにしろ」
ハルバスはグヌヌと仕方なく下がり
私はハルバードの鞍に乗り手綱を叩いて「ハルバード!いくよ!!」
ハルバードの気高き咆哮が空へと響きドラゴン達は空へと飛び上がる
安定高度まで到達すると私は隊列の後方へと下がる。
私の役目は後方から彼らを眺めるだけだ、今回は自分たちの力だけでなんとかしなければならない
アルタイルは迷うことなく方位磁石を見て「南西に3km・・・」
右に旋回して後をハルバスとメライアが追う、戦闘機が編隊を組んだように美しく旋回していく。
バッチリの隊列、後ろから見ていても整っていて見事だ、やはりアルタイルは予想通り化けた。
正確に3km飛ぶと指定したルート通りに、今度は北西に5km・・・さぁできるかな
私は母親のようにアルタイルを見守る
だがアルタイルは迷っていて、方位磁石の読み方を思い出している
「えっと・・・赤色が北を指しているから・・・」
その瞬間ハルバス悪だくみしたように笑い「どうした?早く指示しやがれ!役立たず!!」
私はハルバスを睨み、あの馬鹿・・・隊列を乱すような事をしやがって・・・私が鋭い眼差しで見ると
メライアも今回はハルバスを睨んでいる
ハルバスの狙い通りアルタイルは混乱し始めていた。
私は心の中で念じるアルタイル、自分を信じるんだ、お前はこの隊でも一番学習能力に長けているんだから思い出す事ぐらい簡単なはず。
私の祈りは通じたのかアルタイルは方位磁石を見て関心した表情で、アルタイルは左へと向かう。
私の方位磁石で確認すると「方角は・・・合ってる!合格だな!」
私は安堵の息を吐くと拍手して「訓練終了だ!よくやったアルタイル!」
広場へと私が先導して戻る、帰りの隊列も乱れる事なく平気だった
私の読み通り隊列飛行は今のアルタイルには不必要な訓練だとおもった通りだった
地上へと戻ると
アルタイルは照れていて嬉しそうに首をポリポリかいている
メライアも拍手して褒める「上出来だアルタイル、頑張ったな」
そうすると後ろからハルバスが不満足そうにズカズカと歩いてアルタイルに文句をぶちまける
「何がよくやっただ!!途中で迷ってただろ!?それでリード役が務まったと思うのかよ!?」
メライアと私が睨みつける
メライアが堪忍袋の緒切れが殴ろうとしたが私のパンチが先に飛んだ
メライアが口を開けて驚愕して驚いて慌てて拳を引く
私のパンチでハルバスの腹は凹み大気が避けて風圧が発生して10mほどぶっ飛ぶ
私はドラゴンと人間のハーフ、パンチの力はドラゴンにも劣らない
ハルバスはヨロヨロ起き上がると私は怒鳴りつける「途中でアルタイルを混乱させるような行動をしておいて予定通りいくのが気に入らないか!?隊列を意図して乱す行為はドラゴン達には必要ないっ!!今日はもう帰れ!!」
ハルバスは舌打ちして悔しそうに家へと帰っていく。
メライアが唖然としていて「教官・・・めちゃ強いですね」
私は殴った手をブンブン振って、イテテとアピールすると「ドラゴン達を取り押さえられる力がなければ教官務まりませんから」
メライアは満足そうにそっと離れて自分の櫓へと戻る
アルタイルは私の前に立ち「ありがとうございました!教官殿!」
「礼されるような事なんてしてないよ、ただ、自分の力をあなたは出し切っただけ、これからも頑張ってね」
アルタイルは嬉しそうに敬礼して「はいっ!」アルタイルはもう大丈夫そうだな
今回の報告書は気持ちよく書けそうだ
氏名:アルタイル
性別:雄
種族:ブルードラゴン
年齢:5歳
詳細:ドラゴン養育場から出て運び屋になりたいと志願してきた新米ドラゴン、学習能力は人間並みに高く、学びの分野では次の出るものはない、ただ実際外へ出ると緊張から知識の引き出しが開けられず、混乱して隊列を乱してしまう