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イツワリ  作者: 柏原ゆら
8/43

#08

 とある日、事件は起こった。


(テストまであと三日。これは勝てそうだな)


 千歳との勉強会も無事終え、帰路に就こうと昇降口まで歩いていた。もうすぐで湊との関係が終わりを迎えられる、そう気分が上がっていた。だからだろう。

 最後の一段。下も見ずに階段を降りていたひかりは、その一段を上手く踏めずに滑り落ちたのだった。


「いったぁ~~~~っ」


 仰向けの体勢で、尻を階段に強打する。尻を擦りながら声をあげた。


(……何? 今、何が起こったの? 私って、ドジだったの!?)


 そんなはずない、と頭の中で自問自答を繰り返す。すると、どこからかクスクスと笑う声が聞こえてきた。


「……だっせぇ」


 未だに笑いながら姿を現した彼。その正体は湊だった。ひかりの無様な姿に、笑いがおさまらないといった様子だった。


(……あ、笑ったところ初めて見たかも)


 ふと、今までの記憶を辿る。湊はいつもムッツリしていて、笑顔を他人に見せないような人物だと思ってきた。現実はその想像どおりで、人前ではいつも無表情。宏樹のような仲の良い友達の前では見せているとしても、普段は表情を変えていない。そんな湊が、初めてひかりの前で笑顔を見せた。ひかりは驚きを隠せないのと同時に、その笑顔に見入ってしまった。


「……何だよ」


 ひかりの視線に気づいたのか、少し不機嫌そうに訊ねてくる。ひかりは、一言「べつに」と答えると、立ち上がろうと右足に力を入れた。

 だが、何故か立ち上がれなかった。力を入れようとしても、スッと外に逃げていってしまう。何故だろうか。


「どうした」


 そんなひかりを不思議に思ったのか、湊はひかりの近くに屈んだ。ひかりは何の躊躇いも無く事実を口にする。


「足捻ったみたい……」


 ははは、と乾いた笑いをする。すると、湊は呆れたように、「バカ」とひとつため息をついた。


「乗るか?」

「はっ?」


 自身の背中を指で示しながら訊いてくる湊に、思わず聞き返した。すると、続けて「じゃあこっち?」とお姫様だっこの仕草をする。


「どっちも却下!!」


 即答するひかり。そんなひかりを、湊は数秒見詰めた。そして、「じゃあ、肩貸す」と自身の肩をつついた。肩くらいならいいか、とひかりは肩を借りることにした。


(案外、優しいところもあるのかもなぁ……)


 そう思いながら、湊の右肩にちょこんと手を乗せる。体重は殆どかけなかった。相手が相手だし、自分の重たい体重を乗せる訳にはいかなかったからだ。


「……お前、意外とドジなんだな」

「いやっ、今回がたまたまだし!」


 嫌味を言いながらも、「もっと体重かけろよ」と気にかけてくれた。有り難く思いながら、少しずつ体重をかけていく。重くないかな? と、心配になりながら。

 そんな時、予想もしていなかったことが起こった。


「……あれ、ひかり?」

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