#06
ひかりはこの時初めて、自分の学力の無さを恨んだ。
「入学後テストの補習とか、つらすぎ……」
入学後テストとは、ひかり達新一年生が入学した後、最初に行うテストのことである。このテストの結果は勿論今後に影響し、二年生になった頃のコース選択にも役立つ。赤点だった者は、本日の放課後補習を行うことになっているのだ。補習を行う、つまりひかりは赤点なのである。
(こんなことになるなら、ちゃんと勉強しておけばよかった……。まぁ、ちゃんとやってても変わらないか)
放課後なのに勉強、ということに気が重くなりながらも、補習を行う教室まで足を進める。暫くして教室に着くと、後ろのドアが開いており、そこから中に入った。
すると、目の前に怠そうにしている湊がいた。
「湊!?」
教室には人数分の席が用意しており、ひかりが最後の補習を受ける生徒だったようだ。
ひかりの声を聞いた湊は、重たい首をひかりに向けた。
「よお、虫除け」
「取り敢えず、その呼び方やめようか」
殴りたい衝動に駆られながらも、その拳を静かにしまう。
空いている席は湊の隣しかないらしく、仕方なくその席に座った。
「何でここにいるのよ?」
「何でって、補習受けるからだろ」
(……そっか。湊もバカなのか)
なんだかホッとした。もし湊がこの場にいなかったら、精神がズタボロにやられていたのかもしれない。
湊もバカだということに安堵していると、湊はこちらを向いて眉をひそめた。
「……なに笑ってんだよ」
「え? あぁ、湊もバカなのか~と思って」
どうやら、顔に出ていたらしい。いけないいけない、と顔を少し強めに叩く。
「仲間みたいに言うんじゃねぇ。少なくともお前より頭良いし」
「なんだと!?」
思わず大声を出すと、担当の教師に「柴野、煩い」と怒られてしまった。お前のせいだ、と湊を睨み付ける。
「絶対私のほうが頭良いし」
「いや、俺だろ」
「私だよ!」
「俺」
バチバチ、とひかりと湊のお互いを敵視する視線がぶつかりあう。暫く睨みあった末、痺れを切らしたのか、湊がある提案をした。
「……じゃあ、賭けるか?」
「……いいね。条件は?」
湊の賭けに、ひかりはあっさり乗る。なんだか楽しそうだ、という理由で。
「……来週の中間テスト、どっちが順位が上か。負けた奴は、勝った奴の言うことを聞く」
湊が決めた条件に、ひかりは「決まりね」と微笑んだ。




