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イツワリ  作者: 柏原ゆら
42/43

#42

 ついに、学校祭がやってきた。

 数々の教室が華やかに装飾され、各々決めた出し物をしている。ひかりの教室も、事前の話し合いで決めた『メイド喫茶仕様』になっていた。――そう、メイド喫茶仕様に。


「メイドの格好するの忘れてた~~~!」

「ちょっとー、ひかり? うるさいよ」


 ひかりは学校祭でメイドのコスプレをすることになっていた。そのことを学校祭当日に思いだし、ひかりは嫌々着替えさせられた。


「……っていうか、スカート短すぎない? スースーするし見えそうだし、私ジャージ穿くね」

「ダメダメダメ! メイドはこれくらい短くなくちゃ! ジャージなんて穿いたら、その細くてながーい脚が見えなくてもったいないよ?」

「べつにいいよ、そんなの……」


 よくないよっ、と千歳はひかりからジャージを奪い取る。湊のことですっかり忘れていた。何故、メイドのコスプレを了承してしまったのだろう。


(……っていうか、湊、来てるかな)


 前日の説得で、湊の心は揺らいだはずだ。本人も来ると言っていたし、むしろ来なかったら、今までのひかりの努力が水の泡である。今すぐ湊の教室へ行って確認したいものだ。

 そう思い、足を一歩踏み入れたところで、千歳に腕を掴まれた。どこいくの? と、問われる。


「もうすぐで始まるよ! 教室戻ろっ」


 千歳に腕を引かれながら、嫌々教室に戻った。




「いらっしゃいませー!」


 学校祭が始まって数十分後。隣からは、千歳の軽やかな声が聞こえてくる。何故、そんな高いテンションでいられるのだろうか。さっきから周りの目線は脚に行っているのがわかるし、いつ見えてしまわないかドキドキだし、そんなテンションではいられそうになかった。


(まだ数十分しか経ってないはずなのに、疲れた……)


 はぁ、とひとつため息をこぼす。今すぐジャージを穿きたい。制服に着替えたい。湊がいるか、確認したい。

 すると、隣から今までとは違う明るい声が聞こえてきた。


「ヒロ君っ!」


 どうやら、千歳が愛してやまない宏樹が姿を現したようだ。ということは、湊も……?

 ひかりは、勢いよく俯けていた顔を上げる。その目の前には、湊の姿があった。


「湊っ……!」


 ひかりも、先ほどの千歳のような明るい声を放つ。そして、湊のもとへ駆け寄った。


「湊、来てくれたんだね」

「そりゃ、あんだけ説得されて来ない奴いねーだろ」

「そうだよね」


 どれだけ文句を言われたっていい。来ないと言っていた学校祭に来てくれただけで嬉しいんだ。


「……つーかさ」

「?」

「短すぎ」


 一瞬、何のことだかわからなかった。だが、すぐにスカートのことだとわかり、咄嗟にそれを押さえた。


「わっ、私だってそう思ったし! 自分の意志でやってることじゃないからね!?」


 どうせ似合ってないだろうし、と呟く。すると、湊は首の後ろに左手を添え、顔を逸らした。


「……似合ってんじゃね」

「……え」


 なんとも湊らしくない言葉に、耳を疑ってしまう。それと同時に、なんだか恥ずかしくなってきた。顔に熱が帯びるのを感じる。


「……わっ、私戻るから、宏樹君と適当にその辺座っててねっ」


 そう言い捨て、ひかりはその場を去った。

 前、浴衣を見られた時は「似合わない」ってはっきり言われたのに、何故今回は、あんなに素直なのだろうか。メイド服だって、似合ってないはずなのに。湊なら、「似合わない」ってはっきり言うはずなのに。

 その謎は、解明されなかった。

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