#39
俺達は、篠原家での生活に限界を感じていた。
三姉弟は相変わらずズルい奴らだし、父親も最低だし。唯一優しかったのは、伯母だった。
これは、とある日の朝のことだった。
「ちょっと~! なにこの料理、超不味いんだけど!」
朝食を食べていると、突然音歌が声をあげた。どうやら、朝食の味に文句を言っているらしい。その朝食を作ったのは、他でもない姉だった。
音歌の言葉を聞いた姉は、ごめんなさいとでも言っているかのように俯いた。
「ねぇ、パパもそう思うでしょ?」
「そうだなぁ。ママのほうが上手だな」
父娘は揃って笑いあう。その笑いは、嘲笑っているかのように聞こえた。
「ねぇねぇ、お姉ちゃん。この料理作ったのって――」
恋歌の言葉を遮るように、姉は椅子から立ち上がった。食器を片付け、そのまま部屋へ戻ってしまった。俺も、その後を追いかけるように立ち去る。
部屋に戻ると、姉は、うずくまって泣いていた。
「湊……私、もう無理だよぉ……」
姉は、涙を流しながら震える声でそう言った。俺は、姉をただ見ていることしかできなかった。
その時、俺達の部屋のドアが突然開いた。ビクッと、肩を震わせる。入り口には、伯母が立っていた。
「お、伯母さ――」
「二人とも、荷物をまとめて」
何故だろうか。俺達が首をかしげていると、「早く!」と伯母は、珍しく急かした。
俺達は、何故なのかわからず、取り敢えず荷物をまとめた。すると、伯母に腕を掴まれた。そのまま、玄関へと向かって行く。
「伯母さん……?」
何故玄関なのか。不安になり、口を開くと、伯母は口元に人差し指を立てた。すると、伯母はポケットから何かを取り出した。
「今まで、本当にごめんね。娘達が、色々意地悪なことしてるんでしょう? それに、あなた達が苦しんでいるの、知ってたわ。もっと早くこうしてあげられなくて、ごめんね」
意味がわからない。伯母は、俺達をここから追い出すつもりなのだろうか。そう考えると、一気に冷や汗が出てきた。追い出されたら、もう俺達の行き場はない。本当に、公園のような場所で寝泊まりしなければならなくなってしまう。
「本当は、もっと面倒見てやりたいんだけど、二人に苦しい思いもしてほしくない。だから――」
伯母が取り出した物は、一枚の紙切れと、一通の手紙だった。
「――これからは、二人で生きて」
その紙には、とある場所の住所が書かれていた。
どうやら、伯母は、三姉弟や義理父からの態度を見て、俺達の気持ちを察してくれたらしい。そして、伯母の名前でマンションを借り、そこに住まわせてくれるということだ。
「……伯母さん、ありがとう」
俺達は、篠原家をあとにした。




