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イツワリ  作者: 柏原ゆら
36/43

#36

 ある時、クラスメートの女子にこんなことを言われた。


「湊君の腕ってさ、どうしてそんなに傷だらけなの?」


 そう言って、女子生徒は俺の腕を指さした。俺はすかさず、捲っていた袖をもとに戻した。

 時は十月の始め頃。小学校で行われる文化祭の準備をしていた。そのため、どうしても袖が邪魔になり、捲ってしまう。だが、その腕には、あの日元父につけられた多数の傷があるのだった。


「どんなの? 見せて!」


 その女子生徒の言葉で、俺はたくさんの女子に囲まれた。姉がいるというのに、何故か俺は女が苦手。その理由は、たぶんこういうところにあるのだろう。

 女子達は、俺の袖をなんとか捲ろうと手を伸ばしてきた。俺は必死に逃げる。だが、ついに捕まってしまった。

 女子生徒は、勢いよく俺の袖を捲る。腕にある多数の傷が露になった。


「わ~ホントだぁ」

「痛そう~」


 女子達は各々声をあげ、絆創膏をくれる人もいた。だが、その絆創膏は、いかにも女子! という感じの柄物。男の俺がつけるのは躊躇われた。

 ある時は、もっと酷かった。


「湊君のうちってさ、お父さんいないって本当?」


 突然、一番訊かれたくないことを訊かれた。肯定も否定もしないでいると、その女子生徒は声をあげた。


「えっ、本当にお父さんいないの!?」

「こ、声がおおき……」


 どうしてそう解釈したかわからないが、一応事実である。それを大声で言うとは、女子とはなんともデリカシーのない生き物である。


「やっぱり本当だったんだぁ。かわいそうだねぇ」


 その女子生徒は、隣にいる彼女の友達に「ね?」と同意を求めた。その子も、うんと頷く。

 女子は、俺の心の傷を抉って、いったい何がしたいのだろう。ただ事実を知りたくて、知ったら同情だけして。世の中には、『同情するなら金をくれ』という言葉がある。本当に、その言葉がどおりだと思う。きっと女子は、得た情報を話のネタにするのだろう。本当に、女子は無責任である。

 ――だから、女子は嫌いなんだ。

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