#36
ある時、クラスメートの女子にこんなことを言われた。
「湊君の腕ってさ、どうしてそんなに傷だらけなの?」
そう言って、女子生徒は俺の腕を指さした。俺はすかさず、捲っていた袖をもとに戻した。
時は十月の始め頃。小学校で行われる文化祭の準備をしていた。そのため、どうしても袖が邪魔になり、捲ってしまう。だが、その腕には、あの日元父につけられた多数の傷があるのだった。
「どんなの? 見せて!」
その女子生徒の言葉で、俺はたくさんの女子に囲まれた。姉がいるというのに、何故か俺は女が苦手。その理由は、たぶんこういうところにあるのだろう。
女子達は、俺の袖をなんとか捲ろうと手を伸ばしてきた。俺は必死に逃げる。だが、ついに捕まってしまった。
女子生徒は、勢いよく俺の袖を捲る。腕にある多数の傷が露になった。
「わ~ホントだぁ」
「痛そう~」
女子達は各々声をあげ、絆創膏をくれる人もいた。だが、その絆創膏は、いかにも女子! という感じの柄物。男の俺がつけるのは躊躇われた。
ある時は、もっと酷かった。
「湊君のうちってさ、お父さんいないって本当?」
突然、一番訊かれたくないことを訊かれた。肯定も否定もしないでいると、その女子生徒は声をあげた。
「えっ、本当にお父さんいないの!?」
「こ、声がおおき……」
どうしてそう解釈したかわからないが、一応事実である。それを大声で言うとは、女子とはなんともデリカシーのない生き物である。
「やっぱり本当だったんだぁ。かわいそうだねぇ」
その女子生徒は、隣にいる彼女の友達に「ね?」と同意を求めた。その子も、うんと頷く。
女子は、俺の心の傷を抉って、いったい何がしたいのだろう。ただ事実を知りたくて、知ったら同情だけして。世の中には、『同情するなら金をくれ』という言葉がある。本当に、その言葉がどおりだと思う。きっと女子は、得た情報を話のネタにするのだろう。本当に、女子は無責任である。
――だから、女子は嫌いなんだ。




