#28
だんだん夏の気配を消していく、九月のある日。突然、千歳に話を持ちかけられた。
「明日、ひかりの誕生日じゃん? ひかりん家でパーティーやろうと思うんだけど!」
いいかな? と千歳に問われる。べつに断る理由も無かったので、快く承諾した。
「……あ、でもその日、あかりいるよ?」
「べつに問題ないでしょ! ちなみに、ヒロ君と湊君も誘ったからね」
了解、と千歳に微笑んだ。
翌日。千歳が、湊や宏樹より早めに来た。
家に千歳を招き入れ、ひかりの部屋まで案内する。その時、自室から出てきたあかりとばったり会った。
「……誰?」
あかりは千歳を見て、首をかしげる。二人は何気に初対面であった。
「はじめまして! ひかりの友達の千歳です。よろしくね」
「ということは、あかりの先輩ですね!? はじめまして! ひかりの妹のあかりです!」
二人は軽く自己紹介を交わす。それを終えたあかりは、楽しげに階段を駆け降りていった。ひかりの部屋へ向かう千歳が、ひかりに訊ねる。
「先輩って、どういうこと? まだ中学生でしょ?」
「あかり、私達と同じ高校志望してて。湊にも、今から先輩呼びなんだよねぇ」
「へぇ、そうなんだぁ」
そんな会話をしていると、ひかりの部屋に着いた。入るや否や、千歳は持ってきた紙袋の中から何やらキラキラした飾りを取り出した。どうやら、湊と宏樹の二人より早く来た理由は、飾り付けをする為らしい。二人が来る前に終わらせよう、と千歳から助けを求められた。祝われる人が準備を手伝うのは、なんとも可笑しな光景だ。
「湊と宏樹君はいつ来るの?」
「11時だって」
不意に、壁に掛けられている時計を確認する。それを見た途端、ひかりは声をあげた。
「11時まであと二分しかないじゃん!」
「二分あれば大丈夫でしょ~」
急ぐよ! とひかりは声をかけるが、マイペースに進める千歳。一人で終わらせてやる、とひかりは決意した。
ふと、千歳がひかりに問いかけた。
「ひかりさ、そろそろ湊君のこと本気で好きになれそう?」
「なれる訳ないじゃん、そんなの……って、えぇ!?」
苦笑いが、咄嗟に驚きに変わる。だって、千歳は、ひかりと湊が『イツワリの関係』だということを知らないはず。では、何故――?
「もしかして、私が知らないとでも思ったぁ?」
突然、千歳がクスクス笑いだした。すると、実はね、と話し始めた。
「ひかりと湊君が嘘の恋人だということを知っていまーす!」
「え……どうして? 私、言ったっけ?」
「ううん。だけど、ひかりの行動見てればわかるよぉ。何か変だなぁ、って思って。まぁ、それを確認する為に、事情を知っているヒロ君に訊いたけどね」
やっぱり私の勘は正しかったよ! と、千歳は胸を張る。ひかりは愕然とした。
「いつわかったの……?」
「んー、テストの為に勉強教えてって言われた時くらいかな?」
「結構前じゃん!!」
まぁね、と千歳は再び胸を張る。すると、ちょうど家のインターホンが鳴った。どうやら、湊と宏樹が来たようだ。
玄関まで行って、二人を出迎える。すると、背後からあかりが走ってきた。湊の名を叫びながら。湊は顔を青くし、帰ろうとしたが宏樹に止められ、終いにはあかりに飛び付かれる始末に。面倒くさそうにしている湊に、心の中でドンマイと声をかけた。
そんなこんなで、ひかりの誕生日はとても充実したものになった。




