#26
「ひかりぃ~~~~~!」
宿泊学習を終え早二週間。清々しい天気の朝、早々と千歳が泣きついてきた。
「ひかりぃ、私もうダメぇ……」
「ちょっと、どうしたの? 落ち着かないとわかんないよ」
何とかして、千歳を落ち着かせる。漸く落ち着いた千歳に、再び事情を訊いてみた。すると、千歳はまっすぐひかりの目を見て言った。
「ヒロ君が浮気してるの!」
「……えっ!?」
耳を疑うような新事実である。あんなに千歳を溺愛していた宏樹が浮気なんて、本当だろうか。
「それ、本当?」
「本当だよぉ! 私見たの。ヒロ君が可愛い女の子と仲良さそうに話しているところを!」
「……でも、それだけじゃ浮気っていわないんじゃ……?」
「それだけじゃないもん! 手繋いで歩いてたり、二人で保健室に入ってったり! もしかしたら、二人っきりでいかがわしいことでもしてるんじゃ……」
「考えすぎじゃない?」
苦笑いでそう言うと、千歳にキッと睨まれた。可愛い顔が台無しである。ひかりは、無理矢理話題を変えた。
「と……取り敢えず、外の空気でも吸いに行こうか? 何か変わるかもしれないし」
「ヒロ君が浮気しているという事実は変わりませんけど」
まぁまぁ、と千歳を宥めながら、教室の外に出る。昇降口までの廊下を歩いていると、ひかりと千歳の目は宏樹と見知らぬ女子生徒を捉えた。何やら楽しそうに話している。すると、二人に気づいたのか、宏樹が振り向いた。
「おっ、よぉ! 千歳とひかりちゃん!」
宏樹がこちらに歩み寄ってくる。ひかりは手を振るが、千歳は先程の鋭い目付きで宏樹を睨んでいた。その姿に、宏樹はギョッとした。
「ちょっ……どうした、千歳?」
「仲がよろしいことで」
宏樹は瞬時に首をかしげる。千歳が、さっき宏樹と話していた女子生徒を指さすと、宏樹はあぁ! と手を叩いた。
「なんだ、璃架のことか~」
「へぇ、璃架ちゃんっていうんだ」
「……? 何だ? 千歳変だぞ?」
「変とは何よ! すっごく仲良くしといてさ!」
突然大声を出す千歳に、宏樹は何が起こっているのかわからないといった様子でフリーズした。
「大体、浮気するならもっとこそこそやんなよ! 私に見せびらかしたいわけ!?」
もういい! と叫ぶと、千歳はせかせかと昇降口へ向かってしまった。その後ろ姿を、ひかりは追いかけた。




