#25
(意味わかんないんだけど……)
突然、湊に呼び出されたひかり。訳もわからず、指定された場所に来た。
しばらく湊を待つ。だが、数十分経っても湊は姿を現さなかった。
(そりゃそうでしょうよ。……もう、帰ろ)
立ち上がろうとしたその時、突然息を荒々しくさせた湊が目の前に現れた。
「みな――っ」
目を丸くし、目の前の彼の名を口にしようとすると、ひかりの口は湊の右手によって覆われた。もう片方の左手は、人差し指を立て湊の口元に添えられる。シーッと静かにするよう促す仕草に、思わずドキリとしてしまった。
「……?」
何で? と目で問いかける。すると、湊は背後を指で示した。今まで気づかなかったが、そこにはたくさんの女子の行き交う姿が見えた。
「湊君がこっちに来てるって!」
「さっき見つけたのに逃げられちゃった~」
「絶対捕まえるわよ!」
聞こえる女子達の声に、湊の顔がみるみる青ざめていく。湊は暇だからと言っていたが、そんなリスクを冒してまで会いに来なくてよかったのに。そう、ひかりは思った。
「わり……遅れたのはあれが……」
「あぁ、うん。わかった」
きっと、女子達が追っかけ回したのだろう。湊は人気者なのだ、聞かなくてもわかる。
湊はやっと一息ついた様子で、ひかりの横に座り込んだ。
階段の下にある、小さな影になっているスペース。湊が指定した場所だ。ここに入ってしまえば、簡単に見つかることはない。よく見つけたものだ。
「……あぁ、そうだ。これ」
ふと、湊は何か思い出したかのように、どこからか二本のコーラの缶を取り出した。ほれ、とひとつひかりに渡す。二人は同時に開けた。
すると、次の瞬間、二人の目の前が薄く茶色に染まった泡で覆われた。しばらくの間、静止する。
「……ぷっ」
お互いの顔を見合い、泡がついたそれに笑い合う。どうやら、湊が走って来たせいで振られてしまったようだ。小さな空間が、笑いで満たされた。
笑いが止まり、コーラを飲む二人に夏の夜の風が吹いてくる。
「……ひかり」
突然、湊に名前を呼ばれる。ん? と湊に顔を向けると、口が塞がれた。昨日の朝より長いキスに、静かに目を閉じた。
「どうしたの? 急に」
「……なんか、したくなった」
「そんなに頻繁にしてなかったよ?」
べつにいいだろ、と照れ隠しをする湊に自然と笑みが零れる。なんだか恋人っぽいな、とひかりは感じた。




