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イツワリ  作者: 柏原ゆら
25/43

#25

(意味わかんないんだけど……)


 突然、湊に呼び出されたひかり。訳もわからず、指定された場所に来た。

 しばらく湊を待つ。だが、数十分経っても湊は姿を現さなかった。


(そりゃそうでしょうよ。……もう、帰ろ)


 立ち上がろうとしたその時、突然息を荒々しくさせた湊が目の前に現れた。


「みな――っ」


 目を丸くし、目の前の彼の名を口にしようとすると、ひかりの口は湊の右手によって覆われた。もう片方の左手は、人差し指を立て湊の口元に添えられる。シーッと静かにするよう促す仕草に、思わずドキリとしてしまった。


「……?」


 何で? と目で問いかける。すると、湊は背後を指で示した。今まで気づかなかったが、そこにはたくさんの女子の行き交う姿が見えた。


「湊君がこっちに来てるって!」

「さっき見つけたのに逃げられちゃった~」

「絶対捕まえるわよ!」


 聞こえる女子達の声に、湊の顔がみるみる青ざめていく。湊は暇だからと言っていたが、そんなリスクを冒してまで会いに来なくてよかったのに。そう、ひかりは思った。


「わり……遅れたのはあれが……」

「あぁ、うん。わかった」


 きっと、女子達が追っかけ回したのだろう。湊は人気者なのだ、聞かなくてもわかる。

 湊はやっと一息ついた様子で、ひかりの横に座り込んだ。

 階段の下にある、小さな影になっているスペース。湊が指定した場所だ。ここに入ってしまえば、簡単に見つかることはない。よく見つけたものだ。


「……あぁ、そうだ。これ」


 ふと、湊は何か思い出したかのように、どこからか二本のコーラの缶を取り出した。ほれ、とひとつひかりに渡す。二人は同時に開けた。

 すると、次の瞬間、二人の目の前が薄く茶色に染まった泡で覆われた。しばらくの間、静止する。


「……ぷっ」


 お互いの顔を見合い、泡がついたそれに笑い合う。どうやら、湊が走って来たせいで振られてしまったようだ。小さな空間が、笑いで満たされた。

 笑いが止まり、コーラを飲む二人に夏の夜の風が吹いてくる。


「……ひかり」


 突然、湊に名前を呼ばれる。ん? と湊に顔を向けると、口が塞がれた。昨日の朝より長いキスに、静かに目を閉じた。


「どうしたの? 急に」

「……なんか、したくなった」

「そんなに頻繁にしてなかったよ?」


 べつにいいだろ、と照れ隠しをする湊に自然と笑みが零れる。なんだか恋人っぽいな、とひかりは感じた。

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