#24
「し……死ぬ……死んじゃう……」
隣でそう悶えているのは千歳。先程、一日目の活動を終えてきたところだ。
「はいはい。お風呂行くよ」
ひかりはお風呂の準備をしながら、ベッドで死んでいる千歳に声をかける。千歳はベッドに寝転がったまま、顔だけをひかりに向けた。
「なーんでそんなに元気なのー?」
「これでも結構疲れてるよ。早くお風呂行こう」
そんなこんなで、千歳を無理矢理お風呂へ連れて行った。
「もうダメ。ヒロ君に会いたーい」
入るや否や、千歳は開口一番に心の声を漏らす。そんな千歳に、あははと苦笑いした。
「ひかりも思わないのー? 湊君に会いたいって」
「……あぁ、う、うん、そうだね。会いたいなぁ」
心にも思ってないことが、口から飛び出す。無理矢理笑顔を作った。
「会いに行っちゃう?」
「レポートまだ終わってないからダメです。それに、外出禁止令が出てるんだよ?」
えーと不満そうな声が千歳から出た。
「ひかりったら真面目だな~。そんなの守ってる人少ないって」
「守ってる私達って偉いなぁ」
「ひかり~」
千歳はムスッと頬を膨らませた。そんな姿が可愛くて、ついそれをツンツンとつつく。宏樹が惚れるのもわかるような気がした。
二日目。
昨日よりはマシになった活動を終えてきたひかりと千歳は、部屋へ戻ってきた。
レポートを書き終え一息つくと、何やら出掛けようとしている千歳が目に入った。
「何してるの?」
「これからヒロ君と会う約束をしてるの!」
そう言って、嬉しそうに微笑む千歳。よかったじゃん、と微笑みかけた。
「ひかりはいいの?」
「何が?」
「湊君」
ギクッとなる。ここで断ると、不自然だろうか。だからといって、会いたい訳ではない。悩みに悩んだ末、「私はいいよ」と断った。
「そう? じゃあ行ってくるね~」
「楽しんできてね」
笑顔で出ていく千歳を見送る。一人になった部屋で、ひかりはため息をついた。
(……暇だなぁ)
なんとなくスマートフォンを手に取る。開かれたのは、電話帳だった。それも――湊の。
(はっ!? 私、何しようとしてんの?)
自分の行動に驚き、且つ呆れる。電話帳を閉じたその時、電話が鳴る音がした。小さいそれに、耳をすます。音源は、ひかりのスマートフォンだった。画面を見ると、湊に電話がかかってしまっていた。
(ええぇ!? ちょっ、何で!?)
慌てて切ろうとしたその時、湊が電話に出た。
『――何?』
電話の向こうから聞こえる、不機嫌そうな湊の声。ひかりは、慌てて返事をした。
「あっ、えっと、湊? ごめんね、間違ってかけちゃった」
『……そう』
「う、うん」
そんな短い会話で、二人の会話は途切れる。気まずい雰囲気に、何か言いたい気分になったが、いい話題が思い付かない。あたふたしていると、湊が話を切り出してくれた。
『乙川いねーの?』
「あ、うん。宏樹君に会いに行った」
『あぁ、そういうことか』
謎が解けたかのような声が聞こえる。すると、湊がとんでもないことを言った。
『んじゃ、今すぐB棟の東階段の影に来い。俺も行く』
「え、何で?」
『暇だから』




