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イツワリ  作者: 柏原ゆら
24/43

#24

「し……死ぬ……死んじゃう……」


 隣でそう悶えているのは千歳。先程、一日目の活動を終えてきたところだ。


「はいはい。お風呂行くよ」


 ひかりはお風呂の準備をしながら、ベッドで死んでいる千歳に声をかける。千歳はベッドに寝転がったまま、顔だけをひかりに向けた。


「なーんでそんなに元気なのー?」

「これでも結構疲れてるよ。早くお風呂行こう」


 そんなこんなで、千歳を無理矢理お風呂へ連れて行った。




「もうダメ。ヒロ君に会いたーい」


 入るや否や、千歳は開口一番に心の声を漏らす。そんな千歳に、あははと苦笑いした。


「ひかりも思わないのー? 湊君に会いたいって」

「……あぁ、う、うん、そうだね。会いたいなぁ」


 心にも思ってないことが、口から飛び出す。無理矢理笑顔を作った。


「会いに行っちゃう?」

「レポートまだ終わってないからダメです。それに、外出禁止令が出てるんだよ?」


 えーと不満そうな声が千歳から出た。


「ひかりったら真面目だな~。そんなの守ってる人少ないって」

「守ってる私達って偉いなぁ」

「ひかり~」


 千歳はムスッと頬を膨らませた。そんな姿が可愛くて、ついそれをツンツンとつつく。宏樹が惚れるのもわかるような気がした。




 二日目。

 昨日よりはマシになった活動を終えてきたひかりと千歳は、部屋へ戻ってきた。

 レポートを書き終え一息つくと、何やら出掛けようとしている千歳が目に入った。


「何してるの?」

「これからヒロ君と会う約束をしてるの!」


 そう言って、嬉しそうに微笑む千歳。よかったじゃん、と微笑みかけた。


「ひかりはいいの?」

「何が?」

「湊君」


 ギクッとなる。ここで断ると、不自然だろうか。だからといって、会いたい訳ではない。悩みに悩んだ末、「私はいいよ」と断った。


「そう? じゃあ行ってくるね~」

「楽しんできてね」


 笑顔で出ていく千歳を見送る。一人になった部屋で、ひかりはため息をついた。


(……暇だなぁ)


 なんとなくスマートフォンを手に取る。開かれたのは、電話帳だった。それも――湊の。


(はっ!? 私、何しようとしてんの?)


 自分の行動に驚き、且つ呆れる。電話帳を閉じたその時、電話が鳴る音がした。小さいそれに、耳をすます。音源は、ひかりのスマートフォンだった。画面を見ると、湊に電話がかかってしまっていた。


(ええぇ!? ちょっ、何で!?)


 慌てて切ろうとしたその時、湊が電話に出た。


『――何?』


 電話の向こうから聞こえる、不機嫌そうな湊の声。ひかりは、慌てて返事をした。


「あっ、えっと、湊? ごめんね、間違ってかけちゃった」

『……そう』

「う、うん」


 そんな短い会話で、二人の会話は途切れる。気まずい雰囲気に、何か言いたい気分になったが、いい話題が思い付かない。あたふたしていると、湊が話を切り出してくれた。


『乙川いねーの?』

「あ、うん。宏樹君に会いに行った」

『あぁ、そういうことか』


 謎が解けたかのような声が聞こえる。すると、湊がとんでもないことを言った。


『んじゃ、今すぐB棟の東階段の影に来い。俺も行く』

「え、何で?」

『暇だから』

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