#23
「……湊? どうしたの?」
ボーッとしながら立っている湊に声をかける。だが、湊は何も言わずにひかりを見ていた。波瑠はというと、何故か湊を見つめている。この変な状況に、目を泳がせた。
にしても、湊は何故急にこちらに来たのだろう。恋人だからだろうか。そこらの恋人ならすると思うが、ひかり達は普通ではない。だから、それはないだろう。としたら、何故だろうか。思い巡らせていると、突然ハッとなった。
(湊、もしかして――)
その時、突然湊に腕を掴まれた。首をかしげると、クイッと湊の方に引き寄せられる。そのまま、湊は歩きだした。湊に腕を引かれるがままになっていた。
すると、人が少ないところで、湊は足を止めた。湊は何も言わない。この空気に耐えきれず、ひかりはおもむろに口を開いた。
「――もしかして、キスしたくなったの?」
思いきって訊いてみたが、よくよく考えると恥ずかしい。なんてことを訊いているのだろう。赤くなりかける頬を、湊に見られないよう顔を逸らした。すると、湊が真顔で問いかけてきた。
「……されてぇの?」
「なっ……そんな訳ないじゃん!! 湊がそういう顔してたから――」
「女子が鬱陶しかっただけ」
あっ、なるほどね……と、ひかりは心の中で納得する。そうに決まってる。キスがしたいなんて、思うはすがないだろう。
(……そうでした。私は湊の虫除けでした)
だからといって、べつにどうということではない。湊が飽きるまで、虫除けスプレーとして隣にいればいいのだ。
それから、ひかりも湊も特に会話はしなかった。すると、付き添いの先生の声が響いた。集まれ、と。
「――じゃあ、行こっか」
一緒に行く? 別にする? と、湊に問う。すると、湊は何も言わずに歩きだした――と思ったら、突然振り返った。
――刹那、目の前が湊の顔でうめつくされた。
「……っ!?」
自分の唇触れた、柔らかい感触。驚きのまま、目を見開き口を開けていると、さっさと歩き始める湊が言い放った。
「……キス、してほしそうだったから」
そのまま、湊は早足でこの場を去っていった。
(べ、べつに、してほしいなんて思ってないし……)
残されたひかりは、独りで頬を赤らめた。




