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イツワリ  作者: 柏原ゆら
23/43

#23

「……湊? どうしたの?」


 ボーッとしながら立っている湊に声をかける。だが、湊は何も言わずにひかりを見ていた。波瑠はというと、何故か湊を見つめている。この変な状況に、目を泳がせた。

 にしても、湊は何故急にこちらに来たのだろう。恋人だからだろうか。そこらの恋人ならすると思うが、ひかり達は普通ではない。だから、それはないだろう。としたら、何故だろうか。思い巡らせていると、突然ハッとなった。


(湊、もしかして――)


 その時、突然湊に腕を掴まれた。首をかしげると、クイッと湊の方に引き寄せられる。そのまま、湊は歩きだした。湊に腕を引かれるがままになっていた。

 すると、人が少ないところで、湊は足を止めた。湊は何も言わない。この空気に耐えきれず、ひかりはおもむろに口を開いた。


「――もしかして、キスしたくなったの?」


 思いきって訊いてみたが、よくよく考えると恥ずかしい。なんてことを訊いているのだろう。赤くなりかける頬を、湊に見られないよう顔を逸らした。すると、湊が真顔で問いかけてきた。


「……されてぇの?」

「なっ……そんな訳ないじゃん!! 湊がそういう顔してたから――」

「女子が鬱陶しかっただけ」


 あっ、なるほどね……と、ひかりは心の中で納得する。そうに決まってる。キスがしたいなんて、思うはすがないだろう。


(……そうでした。私は湊の虫除けでした)


 だからといって、べつにどうということではない。湊が飽きるまで、虫除けスプレーとして隣にいればいいのだ。

 それから、ひかりも湊も特に会話はしなかった。すると、付き添いの先生の声が響いた。集まれ、と。


「――じゃあ、行こっか」


 一緒に行く? 別にする? と、湊に問う。すると、湊は何も言わずに歩きだした――と思ったら、突然振り返った。

 ――刹那、目の前が湊の顔でうめつくされた。


「……っ!?」


 自分の唇触れた、柔らかい感触。驚きのまま、目を見開き口を開けていると、さっさと歩き始める湊が言い放った。


「……キス、してほしそうだったから」


 そのまま、湊は早足でこの場を去っていった。


(べ、べつに、してほしいなんて思ってないし……)


 残されたひかりは、独りで頬を赤らめた。

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