#22
今日から宿泊学習だ。
二泊三日で行われるそれは、朝早くに学校に集合。若干脳が起きていない状態だ。
(眠い……)
集まったたくさんの一年生が騒ぐ中、ひかりは寝起きの顔で立っていた。
「――ひかりっ、おはよう」
そんなひかりに声をかけたのは波瑠。ひかりは、寝ぼけ眼で波瑠を見た。
「……あ、波瑠。おはよう」
「どうしたの? すごく眠そうだね」
「いやぁ、寝起きが悪くてさ」
あはは、とひかりは苦笑する。そんな感じで、波瑠との他愛もない会話は続いた。
* * *
「湊君っ、おはよう!」
突然、自分の名前が呼ばれる。反射的に振り向くと、そこからはキャーと歓声があがった。耳が痛くなり、押さえたい衝動に駆られる。何がそんなにいいのか、わからない。だが、逃げようと思っても逃げられないのが現実だ。
湊の行く先には、必ず女子がいる。話しかけられそうになり、逃げるが、逃げても逃げても逃げきれない。こんな日々の繰り返しだ。
(――あいつは……)
咄嗟に、ひかりを目で探した。女子のことで悩んでいたある時、お薦めされた方法がカノジョを作るだった。だからといって、カノジョなんて今まで作ったことないし、あの女子達のようなカノジョじゃ意味がない。そこで見つけたのがひかりだった。そこらにいる女子のように煩くないし、扱いが楽そうに見えた。
(……いた)
湊は、端の方で何やら楽しそうに話しているひかりを見つけた。相手は――西宮波瑠だ。
(……へぇ、仲良さそうじゃん)
そういつもの調子でからかってみるも、何かが引っ掛かる。視線の先で話しているひかりと波瑠を見ると、怒りに似た感情が込み上げてきた。
「……」
足が自然に動く。その足は、二人のすぐ傍で止まった。
「……楽しそうだな」
声をかけると、二人は一斉に振り向いた。
「あっ、湊」
「……」
ひかりは普通に接してくるが、波瑠の目は「邪魔するな」と言っているように見えた。
湊は知っている。波瑠が、ひかりを好きだということを。
(でも、今は俺のカノジョだけどな)
ひかりの「仮のだけどね!!」という声が頭の中でかかった。




