#21
「――今回の宿泊学習は、クラスメイトとの友情を深めると共に、協力することの大切さを学ぶ為に――って、中学生かっての」
「宿泊学習?」
本らしきものを手に持ち、何やら読み上げる千歳に訊ねる。すると、千歳から「これっ」と先程まで読んでいたものを渡された。表紙には、『第一学年宿泊学習』と書かれている。
「二週間後に行くんだって。聞いてなかったのぉ?」
「ごめん、スマホいじってた」
あはは、と苦笑いをする。千歳の呆れた様子を確認し、おもむろに渡されたしおりを開いた。日程やら持ち物やら、宿泊学習の内容について文字が並べられている。ザッと目を通すと、どうやらこの宿泊学習が一年で一番大きな行事らしく、意外と豪華なものだった。
「凄いよねぇ、二人一部屋って。それに、新幹線は貸し切り、食事は三食全てバイキング、お風呂は露天風呂付きって……修学旅行みたい」
「本当。どこに行かせるつもりなのよ」
ひかりと千歳で色々突っ込むが、活動内容はクラスやグループの協調性が問われる、ちゃんとしたものだった。場所は遠い山奥。何となく内容がよめた気がした。
「はぁあ、ヒロ君と同じ部屋がいい」
「残念。男女別でなくちゃいけないし、何よりクラスが違うからね」
「知ってるよぉ、そんなの」
どんな時でも宏樹を想う千歳が愛らしく見えた。ふふ、と微笑む。すると、千歳の視線がひかりを捉えた。
「ひかりだって、湊君と同じ部屋がよかったでしょ?」
「ぅえっ!? あっ、まぁ……」
なんて、勿論嘘である。一度もそんなこと考えたことなかった。おそらく、ひかりより、学年のほぼ全員の女子のほうがそう思っているだろう。
(……なんか、モヤモヤする)
得体の知れない気持ちに、ひかりは違和感を覚えた。きっと、湊は宏樹と同じ部屋にするだろう。何せ、男女別でなくてはいけない。何より、ひかりは別のクラスだからだ。
(っていうか、もし同じクラスだとしても、きっと湊も望まないでしょ。私も望んでないし)
ひかりと湊は『イツワリ』の関係なのだ。そんなことわかりきっているのに、この靄のかかった気持ちは一体……?
――宿泊学習は、早々と訪れる。




