表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
イツワリ  作者: 柏原ゆら
13/43

#13

 初めてキスをした日から、毎日のようにキスをせがまれた。それも、全部ひかりから。

 湊との賭けに負け、『キスをする』という命令に従わなければならなくなってしまったひかりは、何故か『これからもしろ』という湊の追加の命令に頷いてしまった。頷いたからにはやらない訳にはいかない。放課後、学校の使われなくなった暗い教室で、毎日のように湊に薄く浅いキスをする。そんな日々が続いた。

 そのうち、ひかりは湊とキスをすることが楽しく感じてきたのだった。


(……そんなの感じる訳ないよね。私、どうかしちゃってる)


 でも、時々思い出してしまう。キスをする瞬間、湊の唇の感触。それらを思い出す度に、頬がぽわっと熱くなるのだ。そんな気分をまぎらわすかのように、スマートフォンをいじる。

 とある日、ニコニコ笑顔で千歳が話しかけてきた。


「実はねー、この前ヒロ君と初キスしちゃったの!」


 その言葉を聞いた瞬間、飲んでいたジュースを吹き出しそうになった。そんなひかりを、千歳は怪訝そうに見る。何でもないよとはぐらかし、先を促した。


「付き合って三ヶ月経ってたのにやっとだから、ちょっと遅いかな~って思ったんだけどぉ~――」


 千歳のノロケ話はまだまだ続いた。

 突然初キスの話をするもんだから、自分達がしているのがバレてしまったのかと焦った。「まだ一回しかしてないんだぁ」と照れる千歳に、複雑な気持ちになった。


(私なんて、数えきれないほど……!)


 なんだか急に、恥ずかしさが湧き上がってきた。そんなひかりに、千歳はふと問いかけた。


「ひかりはさぁ、湊君の仕草とかにキュンキュンしたりしないの?」

「キュンキュン?」


『キュンキュン』とは、どんな感情なのだろうか。聞き返すと、千歳は胸の辺りで拳を作り、脇を締めて『キュンキュン』の動作をした。ひかりは首をかしげる。千歳は脱力した。


「今時キュンキュンがわからないなんて……」

「悪かったわね!」


 千歳は、呆れたようにため息をつく。ひかりだって、実際全くわからない訳ではない。


「た……例えばどんな?」


 それでもやはりピンとこず、千歳に訊ねた。すると、千歳は腕組みをして考え出した。


「例えばぁ……言ってることとやってることが全く違う時とか!」

「?」


 どういうことだろうか。そんな時があるのだろうか。首をかしげていると、補足してくれた。


「だからっ、嫌々言いながらも相手のことを思って何かをしてくれる時とかさ! もう、キュンキュンしない!?」


 そう訊かれても、そんな経験は無いので答えられない。千歳はあるというのだろうか。


「ほら! 湊君がしているところ、想像してみて!」


 渋々千歳に従い、それを想像してみる。


(……できない)


 何故かできなかった。それは、たぶん湊のことをそんなに想っていないからだろう。


「じゃあ、西宮君で!」

「波瑠はそういうことするタイプじゃない……」


 ひかりの言葉に、千歳は確かに、と頷いた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ