#11
テスト尽くしの一日は、早々と過ぎ去っていった。
翌日、テストが返ってくる日だ。
「手応えは充分だった!」
返却前に、ひかりは意気込みを示す。それを聞いた千歳は「よかったじゃん~」と手を叩いた。
すると、返却が始まった。
返却は出席番号順に行われる。千歳はひかりより若い番号なので、先にテストを受け取った。千歳は可もなく不可もなくといった、普通の顔で戻ってくる。そうしているうちに、ひかりの名が呼ばれた。ドキドキしながらテストを受け取り、恐る恐る点数を見た。
(……あれ? こんなもん?)
結果は、普通だった。それこそ、可もなく不可もなく。いつものよりは全然できているが。
(もうちょっとできてると思ったんだけどな~)
何にせよ、赤点を免れたことには変わりない。あとは湊との賭けだけだ。
何故か、使われていない教室に連れていかれた。
「何でこんな所で?」
先に教室に入った湊に問いかける。が、湊は一度振り向いただけで、何も言わなかった。
なんなの? と思いながら湊と向き合った。
(……来た。この時が)
湊はゴソゴソと鞄の中のテストを取り出す。ひかりも同じように取り出した。
それらを、一斉に見せ合う。ひかりは少しドヤ顔をした。
だが、その顔は一瞬にして驚きの表情に変わった。
ひかりの結果は平均六十点。それに比べ、湊の結果は平均八十点超えだった。
「はっ……!? ちょっ、これ本当にあんたがやったの!?」
「当たり前だろ」
普通、平均八十点超えで赤点になることはない。今回の賭けの為に、誰か頭のいい人にやってもらったのではないだろうか。もしくは、そのような人の答案をカンニングしたのではないだろうか。そう、ひかりは思った。
「おかしいでしょ! 補習受けてたのに!」
「俺はやればできる奴なんだよ」
納得がいかない。このままだとひかりの敗けが確定してしまう。それだと、今日終わると思っていたこの関係が続くことになるのだ。
「嘘ぉ……」
ガックリと肩を落とす。抵抗する余地もなく、ひかりの敗北は決まった。
(絶対勝てると思ってたのにぃ……)
思っていたとしても、敗けは敗けだ。そう自分に言い聞かせ、ひかりは落としていた肩を戻した。キリリとした面持ちで、湊に問いかける。
「……で? 何を私にしてほしいの?」
すっとんきょうな頼みじゃないことを願いながら、湊の言葉を待った。暫くの沈黙の後、湊は無表情のまま口を開いた。
「俺にキスしろ」
「……はっ!?」




