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『いつか、どこかの誰かの為に』SiDe:A
本を手にして失った少女の話。
「ラッキーガール! 君のコレを授けよう!」
異質な男が私にソレを授けたのは一ヶ月前。それはこの世にあってはいけない一冊の本。
「ガール。君に一つだけ忠告してあげよう。
ソレを自由に使うのは勝手だが、決して開いてはいけないよ」
それは所謂パンドラの箱。開いて襲い掛かってくるのは災厄ばかりなのだ。
希望なんてありはしない。
「しかし、ミサキ。君は開かずにはいられないはずだ。だって、それは人間というイキモノだろう?」
異質な男が歪んだ笑顔で笑う。
そう、禁じられたことをやってしまうのは私達の運命。
アダムとイヴが禁断の果実を齧って楽園を追い出されたように、私達は何度も同じ過ち“禁忌”を繰り返す。
そして私は開いてしまう、禁断の書物を。
そして私は知ってしまう、ソレが禁断である意味を。
いつか何処かでソレを手にする誰かのために私は願う。
願わくは禁断の扉を開かないことを……。
「さぁ、再びゲームを始めようか? この私、ヴィルジール・サミュッシュによって作られたゲームを」
また、禁断のゲームの火蓋が切って落とされる。