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神々の交渉

一通りこちらの風神に文句を言ったエアファンは、用が終ったとばかりにファンレムから離れ、カルミラの傍へ戻った。普通の笑顔を浮かべ、カルミラへと話し掛ける。

「カルゥだったね、ちょっと相談があるんだけど…良い?」

相手と身長差がある為、空中に浮きながら、可愛らしく首を傾げ、カルミラと視線を合わすエアファンに、彼も微笑んで尋ねる。

「エアファン殿、相談とは、何でしょうか?」

何故か、ちょっと不機嫌になったエアファンは、速答を返す。

「カルゥ、エアで良いよ。

本当なら、敬称も取って欲しいけど、カルゥって皆に着けてるから…諦めるね。」

呼び名の事で、不機嫌になっていたらしく、それを訂正して、普段の微笑みになった風の神は、話を続ける。

「相談ってね、君の大地の精霊の事なんだけど…ディア、こっちに来て!」

呼ばれた大地の精霊は、エアファンの傍に寄って来た。

その隣には、エアファンと同じ彩の精霊とその息子らしき、青年がいる。彼等の姿に、何を指しているのか、カルミラには判った。

微笑みのまま、その家族を見つめて、口を開く。

「ディアナラナでしたね、貴女は、素晴らしい判断をしたのですね。向こうの世界の精霊との婚姻…本当に、喜ばしい事ですよ。」

嬉しそうに告げるカルミラに、でしょとエアファンが相槌を打つと、何とも言えない顔で、お互いを見ている双神と、彼等とは全く反対の、妙に浮き浮きしている、その兄神の姿が地神の目に入る。

彼等の様子を、不思議に思ったカルミラは、兄神であるカーシェイクに尋ねた。

「カーシェ殿、何故その様に、嬉しそうなのですか?」

投げ掛けられた質問に、カーシェイクは、物凄く楽しそうに答える。

「カルゥ、この子達を、向こうの世界に連れて帰りたいのだけど、君達から、その許可が欲しいんだよ。」

用件のみを、単刀直入に言う兄へ、二人分の声が掛る。

「兄上…、必要な事を飛ばしては駄目です。

カルゥ、この二人は先程、私とリーナを主として定めた。だから、向こうの世界へ連れて帰って、良いか?」

「お兄様、大事な事を素っ飛ばすなんて…幾ら嬉しい事だからって、いけないわよ。

カルゥ、オーガの言う通りなの、向こうの世界へ連れって帰っては、駄目?」

二人の言葉に、カルミラは真剣な目で彼等を見つめ、改めて口を開く。

「ディアナラナの主が、リーナ殿ですね。

と言うと…こちらの息子さんが、リシェア殿の…騎士ですか?」

と的確な答えを述べるカルミラに、頷く双神。

彼等の行動にカルミラは、件の対象の精霊の家族へと歩み寄る。そして、自分の精霊のディアナラナとその息子へ声を掛ける。

「御久し振りですね、ディア、

そして、初めまして、ディアの息子殿と、その婿の精霊殿。私は此処の地神の、カルミラと申します。お二方のお名前を、教えて頂けますか?」

改めて挨拶をされた精霊の家族は、かの神へ挨拶を返す。

「初めて、お目に掛ります、私は向こうの風の神で在らせられる、エアファン様に仕える風の精霊騎士の、エアリムと申します。」

「初めまして、私は大地の精霊・ディアナラナと、風の精霊・エアリムの息子で、エレムディアと申します。」

カルミラは、親子の挨拶を笑顔で受け取り、言うべき事を告げる。

「ディア、エレム、お二人には私から、お願いがあります。如何か、こちらに居られる双神の方々に、私達の代わりに、助力して貰いたいのです。

迷惑をお掛けした双神の方々に私達自身が、償いをすべきとは判っていますが、今は、あちらの世界を知る事で手一杯なのです。ですから、私達の代わりに、あの方々の傍で、あの方々の御力になって頂けませんか?」

己達の地神から、頼み事を言われた精霊達は、驚きながらお互いを見合わせ、決意を固めたかの様な表情で、相手に向き直し、頷く。

精霊達の様子を見て、カルミラの言葉に便乗したファルナディナとルシェルド、こちらの命神・バルクァナと輪廻神・レムルアが、彼等の向こうの世界への帰属を認め、促すような説得をし始める。

四人の神々の言葉に、他の神々は成す術も無く、只、彼等の遣り取りを見つめるだけしか、出来なかった。

その時ふと、命に関係する神々である二神が、彼等が帰属するあちらの世界の事を気にして、それを口に出した。

「私達の承諾は有りますが、向こうの世界の、命の神と大地の神は、承諾されるのでしょうか?」

「レムルアの言う通りです。

こちらが承諾しても、彼方の神が…え?そこに居られるのは?」

初めて見るキャナサの姿に、彼等は驚きを隠せない。

緑色の肌で、全ての生き物の特徴を持ち合わせている様な、不思議な姿の、女性とも男性とも判らない人物。

カルミラとルシェルド以外は、初めて見るその姿に、視線を集めた人物は、金色の両目で、彼等を見つめた。

「一部を除いて、初めまして。

私はキャナシル・フェー・ルシム・キャナサ。

バルクァナとレムルアでしたね、向こうの事は、気にしなくて良いですよ。

私が来ているから、何の問題は無いですし、大地の神なら、ここに居る双神の母親ですから、事後承諾でも、特に問題は無いですよ。」

余所行き用の口調で、話す彼女(彼?)に、カルミラと初めて会った時の、弱々しさは無い。ここに居るのは、向こうの世界の、神々の一人だと言う事を示す態度で、彼等を見つめ、ゆっくりと彼等の近くに歩み寄る。

「リシェア達が、言いたい事を言ってくれたから、我慢しようと思ったけど…さっきのエアを見たら、私も、文句を言いたくなったんだけど…言っても良いかな?」

キャナサの言葉に、カルミラとファルナディアは、承諾の頷きをした。この事で、こちらの神々の成長を促せると思ったのだ。

彼等の頷きに、大きな深呼吸をして、キャナサは言いたい事を告げる。

「貴方達はよくも、私の創った命を蔑ろにしてくれたね。私達に無断で、こちらに引き込み、勝手にその生を奪うなんて…貴方達に良心て物はないの?

貴方達は自分の創った物が、そう言う風に扱われて、何とも思わないの?」

態【わざ】と自分の役目を名乗らなかった、キャナサは、怒りの籠った目で、こちらの神々を見据える。珍しい彼(?)の怒りに、カーシェイクが口を開く。

「ナサの言う通りだよ。

君達は自分の事、自分の世界の事ばかりを考えて、他の事は考えず、後回しにする。そんな幼稚な考えは、神として如何なのかな?私が何時も、説教で言っている事が誰一人、理解出来ているとは、思えないんだけどね…。」

一部を除いては、と付足すあたり、流石は知の神である。

自分が教え、説教をしている間でも、彼等の行動等を見抜き、一人一人の性格や頭の出来具合…いや、理解能力を計っていたのだ。

彼等の言葉に、キャナサの一番近くにいた神々が口を開く。

「申し訳ありません。

彼女達や、彼女達に巻き込まれた者達へ新たに、幸せな転生を施そうと思ったのですが、彼女達の魂は邪な輩に捕われ、巻き込まれて命を失くした者は…私達の術が、効かなかったのです。」

「レムリアが言った事は、本当です。

私も頼まれて、その魂を回収しようとしたのですが…全く出来なかったのです。

捕まえようとしても、擦り抜けて…終いには、羽の様な形になってしまって…集める事も出来ませんでした。」

二人の神の言葉に、嘘が無いと判ったキャナサは、何故出来なかったのか、説明する。

世界間での魂の創りの違いと、時の流れの違いの有無、そして…

「魂が羽根になったのは、私が創るそれは、私の羽毛から出来ているの。だから、普通の回収方法では、集めるのは無理だよ。

…そっか…世界と同化してないから、余計に転生出来なかったんだね。」

異物として扱われた為、向こうの世界の人間の魂は、ここで生まれ変わる事が出来なかった。加えて、生き残った者は、時間と切り離されている為、年を取らず、生き続けていたのだ。

暫くこの事を考えたキャナサは、生誕祭までここに滞在し、巫女の召喚に巻き込まれた者で、こちらに残る者達と、向こうへ行く精霊達の調整を行う事にした。

一応予定していた全てが終わり、後はリシェアオーガが生誕祭の準備の為、一時的に帰る日まで、彼等は平穏に過ごした。

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