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ルシェーネ神殿の騎士達

【破壊する者】のその後です。

本編を先に読む事を、お勧めします。

 ここは北の大地の、とある細工師の工房。

まだ肌寒いこの地では、ある事が話題になってた。

「おい、知ってるか?あの破壊神の事を。」

「ああ、向こうの世界の神に命ぜられて、守護神になったらしいぜ。

しかも、新しい紋章は、金色の龍を模しているらしい。」

「おいおい、剣の手練れが使う、あれをか?一体どんな冗談だか。」

「何でも、今回の巫女が選んだらしい。全く、(ろく)なことをしない巫女様だぜ。」

「全くそうだ。」

「お前ら~、変な噂話ばかりしないで、さっさと手を動かせ!」

「「「へい、親方!」」」

親方と呼ばれた、50代位の体格の良い、黒い中にやや白い物が混じった髭と頭髪の親父は、溜息を吐きながら、弟子の動きを見ていた。

まだまだ半人前の、若い弟子共だったが、彼に取って大切な者達である。

彼等を見つめながら、先程の話題を、親方は思い出した。

金と銀の光龍…それは、ある御方を象徴する物。それを…金だけでもあの破壊神が、身に付けるなどと、どんな冗談だか…そう彼も思った。

彼も弟子達には、同感だった。 

あれを身に付ける事が、本当に相応しい方は、あの御方しかいない…。

巫女は、向こうの世界の住人の筈だが…、とんだ無知な女だと、彼は思った。





 

 巫女としての役目が終わり、父親である向こうの世界の、光の神・ジェスクに言われ、リシェアオーガは未だ帰らず、こちらの世界でルシェルドの指導をしていた。


 あれから3日経ち、以前のルシェルドの神殿・ルシェーネ神殿は解体され、他の地に新たな神殿を造る事が決まった。

神殿騎士と神官は、ここ、カルエルム神殿に一時預かりとなったが、ルシェルドを信頼し、仕えている騎士達だけが、この神殿に残る事となった。

神官と言えば老人ばかりで、他の神殿からの、お払い箱同然の者達であった為、誰一人として、ルシェルドに再び仕えようとしない。

彼等に引導を渡し、神官は新たに募る事となった。

まあ、神殿が出来上がるまでの、何年間で集まれば良いと、ルシェルドは言っている。只、一時預かりとなった神官騎士達は、自分達が敬う神の許に、再び集まれた事を喜んでいた。



隊長のライジュは、(みな)が無事で移動を完了した事をルシェルドへ報告しに、仮の執務室へと向かった。そこには何故か、大神官と聖騎士の姿が無く、アルフェルトのみ、ルシェルドの傍に控えていた。

「ルシェルド様、報告いたします。

ルシェーネ神殿の騎士・総勢19名、カルエルム神殿に到着しました。」

「御苦労だった、ライジュ。」

報告し終わったライジュは、見当たらないあの小さな騎士と、大神官の事を聞いた。

「…つかぬ事をお聞きしますが…、

ルシェルド様の騎士と、大神官様のお姿が、見えない様なのですが…・。」

ああ、そうかと言いつつ、ルシェルドは返答をした。

「大神官は、四日前に役目を返上し、元の(あるじ)の処へ帰っていた。

騎士は…」

告げようとした言葉は、廊下側の扉を叩く音で中断された。ルシェルドが入室を許可すると、金色の髪の少年が入って来た。

「ルシェルド、ルシェーネ神殿の騎士達が、来たようだけど…、あれ、ライジュ?」

白が基調で、黒い縁取りのされている見覚えの無い、騎士服らしき物を身に付けた少年が、ライジュの目に入ってきた。

聖騎士の服とは全く違う、金色の龍の装飾が、あちこちに施されている服を、ライジュは凝視した。只、その服は少年に良く似合っていて、何とも言えない気分になった。

「確か…リシェアオーガだったよな。何で、そんな服を着てるんだ?

聖騎士の御役目は、どうした?」

「済まない、ライジュ。オーガの…リシェアオーガの聖騎士は、仮の役目だ。

本当は、我が巫女だったのだ。」

「…今は、元巫女だ。

この服は、元々の役目の服だが…何か、不都合でもあるのか?」

ライジュの質問に、二人は答え、リシェアオーガに至っては、逆に質問を返された。 

「リシェアオーガ、それが、如何いう意味を持つものか、知っているのか?」

「此方では北の地方で、剣の手練れが持つ。

向こうの世界では、私を…神龍の王を示す、黄金と菁銀の光龍の姿。」

「な…」

返された言葉に、ライジュは絶句した。確かに彼の服装は、この世界には無い物。

見た事も無い服に…腰の物も驚きの産物だった。

色々な色の長龍が描かれた剣は、不可思議な物であり、これ程、多彩な龍を描いた物は、ライジュは見た事が無い。

(せいぜい)々金色の龍か、黒い龍位だった。

ライジュの様子を見て、アルフェルトは笑い出した。

「そう言えば、ルシェルド様。まだ、通達をされていませんでしたね。」


笑い出したアルフェルトの方を見ると、その左腕には、今まで無かった金色の腕輪があった。

噂にだけ聞いた事のある、その巫女の証しの腕輪──向こうの神の祝福の腕輪──が何故か、アルフェルトの腕に存在している。

「アルフ…それは?」

「ああ、向こうの神の祝福だよ。今回の巫女の噂、隊長は聞いた?」

「…一応は。向こうの神って、噂だったが…。」

「その通りだ。オーガは、向こうの神々の一人だ。本当の呼び名は、向こう風で言うと、ファムエリシル・リュージェ・ルシム・リシェアオーガ。

意味は、(いくさ)の神・リシェアオーガだ。」

驚愕の事実を聞いたライジュは、リシェアオーガを凝視する。彼は平然とその視線を受け、何と言わんばかりの視線を返して来る。

そこへ、聞き覚えのある声が耳に届いた。

「ルシェルド様。此方に、リシェアオーガ様が、いらっしゃいませんか?」

ルシェルドの許可の言葉と共に、入室してきたのは、あの大神官のフェリスだった。然も、見知らぬ騎士を連れていたが、ライジュは気にも留めなかった。

それ程、フェリスの服装に驚いたのだ。

それもその筈、見間違(みまが)う事の無い、珍しい薄緑の髪は、何時もの様に後ろで結んであったが、如何せん、服装が違い過ぎていた。

基本となる色は白で同じなのだが、袖は長方形、装飾は金色の組み紐、金色の龍、そして、あの短剣が、堂々と存在していたのだ。

「…フェリス大神官…様。」

「ライジェ殿、御久し振りですね。

今の私は、大神官ではありません。向こうの世界の、一人の神に仕える一神官ですよ。

以前、貴方に嘘を言って、申し訳ありませんでした。あの時は如何しても、向こうの世界の神官だと、言えなかったのです。」

にっこりと微笑み、彼に答えるフェリスは、リシェアオーガの姿を見つけると、その傍に駆け寄った。

「リシェア様。カーシェイク様から、御伝言です。

近々キャナサ様が、此方に御見えだそうです。恐らく、今、此方に来た方々の気配から、ノユ様とエルア様が、その詳細を御伝えに来られたみたいです。」

「ああ、確かに、ノユとエルアが来たな。…判った、直ぐ行く。」

「私も行こう。」

「ルシェルドが来るなら、アル、ライジュに説明を頼めるか?」

「承知しました。我が神々。」

複数に返事するアルフェルトに、ライジュが訝しげな視線を投げ掛ける。

「隊長…あまり上手く、説明出来ないのは、ご勘弁して下さい。」

そう言いながら、アルフェルトは、ライジュに説明をし始めした。

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