表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/3

策謀の幕開け

「蛮族めがッ」

コルステーシア国王は、手ににぎった書類を、床にたたきつけた。

「金に物を言わせましたな・・・」

クルスリーが、小さくつぶやいた。クルスリーは、セリウスと双璧をなすコルステーシアの名門貴族の、主である。宮殿の奥にあるこの部屋は、昼でもうす暗い。ちいさな部屋の四隅に置かれた燭台の煌々とした明かりが、ぼんやりと部屋を照らし出している。

「まさしく。ガーベル族の突然の襲撃は、それしかありえませぬ」

クルスリーの傍らで王と向き合う官位姿のセリウスが、静かな声で言った。

「バロルークスめ、いまいましいッ!驕慢もいいかげんにせんかッ」

国王は、激昂したようすで気炎をはく。

「彼は都市国家アナトールの独裁官として半島各地のラレアドール家の分家をたばねておりますから、蛮族を買収するぐらいはたやすい所業でしょう。まぁ、しかしやつらはよそ者です。そのうちに、人望を失って自壊しますよ」

セリウスの声音は、国王とは反対に、静かで沈んでいた。

「それだけではないのだッ!やつら、ぬけぬけとわしにキルクス族撃退の祝賀の使者を送ってきておる。謁見は三日後になるそうだ」

国王は、吐き捨てるようにして、言った。まだ若い国王の、茶色の鬚が小刻みに震えている。しばらく、うす暗い部屋に沈黙が流れた。

「一芝居、うちますか」

突然、セリウスが沈んだ声で言った。

「どういうことだ?セリウス」

国王はなかば身を乗り出して、燭台にてらされているセリウスを、見つめる。

「言うまでもないことですが、祝賀の使者といっても、真の目的はこのコルステーシア市の様子を探ることでしょう。聞いたところによりますと、バロルークスは猜疑心の強い男で、一族の者しか信頼しません。そこで、彼にすれば、信頼できない族外の人間を使者にたてれば、我々に買収されてしまうかもしれない。彼はかならずやラレアドール家の人間を使者にしてくるでしょう。いかに栄華を極めるラレアドール家の人間でも、コルステーシアの城門をくぐれば、いかようにも歓迎の趣向は凝らせましょう」

セリウスの言葉に、国王はわが意を得たり、とばかりにうないた。

「ほぅ、それはおもしろいではないか」

クルスリーも、興味ありげに傍らのセリウスを見る。

「では、使者の歓迎の仕度をいたしませぬとな」

セリウスはふくみ笑いをしつつ、話した。コルステーシアの国王と二人の高官は、部屋の中で密議をはじめた。――


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ