最終話 双樹の下で(結)
トウマが「核」に吸収されると、「核」が放つ光が強くなり、明滅の暗転までの時間も長くなった。
世界樹が力を取り戻したのだろう。
私とユウマはしばらく動けないままだったが、徐々に力が戻ってくるのを感じた。
「……ユウマ」
私は声が出せるようになった。ユウマと話がしたかった。今すぐ抱きしめて、どこにも行かないように押さえつけておきたかった。
「もう、あなたが犠牲になる必要はないのね」
「……そうだね。トウマには申し訳ないことをした。彼はまだ若かったのに……せめて、彼が望むところに魂が向かっていることを祈るよ」
「彼の想いを裏切らないで……」
「わかっているよ……正直に言うとね、すごくほっとしているんだ。あれだけ自分で世界を救うと意気込んでいたのにね」
私はそれを聞いて安心し、同時に憐れみを感じた。
やはりユウマも死にたくなどなかったのだ。それなのに、抗いようのない、あまりに重い責務を負わされていたのだ。
「アナとまだ一緒にいられるんだ……」
独り言のようにユウマが言った。
私は何とか腕と足を動かして這いながら、ユウマのほうに近づいた。
ユウマも同じように這いつくばって、私のほうに近づこうとした。
長い、とても長い距離のように感じた。
それでも私たちは諦めない。
ビーが私の腕を咥え、引っ張って助勢してくれて、ようやくユウマのもとに手が届いた。
私はユウマの手を握った。強く、とても強く握った。ユウマも私の手をしっかりと握り返した。
双樹の下で、一度、命を懸けた別れを決意しながら、私たちは再び邂逅を果たしたのだ。
私の、失踪した元勇者の恋人を追う旅は、そうして終わりを迎えた。




