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世界樹と虚無樹の交差するところ  作者: Vou


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回想7 フタバとビー(前編)

 十五年前、フタバが誕生した。

 フタバという名前はユウマが決めた。私たちを受け入れてくれた双樹教会にちなんだ名前だということだった。


 ヒト族のユウマと魔族の私の間に子どもが誕生するという奇跡に、私は感激し、感動した。

 ただ、同時に、この娘をどう扱ってよいのかの不安、もっと言うと、正しく子どもを扱える自信がなかった。


「どんな親でも自信なんてないよ。皆、親の初心者なんだから」


 そうユウマは言った。

 しかし、そんなことではないのだ、と私は思った。


 物心がついた頃には父に見放されており、自分に利益をもたらさないとわかった途端に母に捨てられ、親と子は利害でしか結ばれないという価値観から自分が脱せられるとは思えなかった。

 それならば、子ども同士の社会で育ったほうがより社会性や生きる方法を学べるのではないかと思った。


 フタバには、魔族の証とも言える角があるにはあったのだが、幸いなことにこぶ程度のもので、髪の毛が生えそろえば十分隠せるものだった。

 成長するうちに長くなる可能性がなくもなかったが、当面は問題なくヒト族としてみなされるだろう。


「双樹教会に預けたらいいわ」


 私は思わず、そう口に出していた。


 それを聞いたユウマは、珍しく怒りを見せた。自分たちに育てる能力がある限り、自分たちで育てなければならない、と強く主張したのだ。

 しかし、私も譲らなかった。ヒト族の文化と魔族の文化は大きく違う、あなたはそれを理解しないといけない、そう突っぱねた。

 そうして、ユウマと言い合いを始めると、愛らしい顔をした赤ん坊のフタバが、不気味な何者かに見えてきて、ますます私はこの子と離れなければならないという気持ちが強くなるのだった。


「この子が育って、親に捨てられたことがわかったら悲しくなると思わないか?」


「思わないわ。私も親に捨てられたけれど、それが当然のことだと思っていたわ」


「この子はヒト族の子でもあるんだ……」


「魔族の子でもあるわ。私と暮らしてこの子が幸せになれるとは思えない」


 議論は膠着した。この問題は永遠に解決しないように思えた。


「君のためなんだ……」


 どういう意図でそう言ったのかはわからないが、ユウマが最後にそう言った。


 そのとき、私は急にユウマが愛想を尽かして、私を放り出そうとするのではないかという気がした。ここまで激しく言い合ったことはなかったので、急に不安になったのだ。


 最終的には私が折れ、私自身、あるいはフタバに何かよくない兆候が出たら、双樹教会にフタバを預ける、また、仕事を続けたかったので、仕事中は双樹教会に預けるという条件で、ひとまずフタバをユウマと二人で育てるということで、同意することになった。


 私たちが言い合いをしていた間、ずっと眠っていたフタバが目を覚ましたようで、大声で泣き始めた。

 その声に私はまた恐怖を覚えた。


 フタバの眠るゆりかごにビーが駆け寄った。そして、フタバの頬を舐めた。

 するとフタバが泣き止んで、今度は笑いだした。

 不気味な存在には変わらなかったはずだが、その笑顔はかわいらしい、と思った。


 ビーが私のほうを見て、私が面倒を見ないなら自分がその役目をするとでも言わんばかりの顔をした。



 結果的に、私がフタバを見放すことはなかった。小さなフタバはかわいらしく、ちょっとした動きや表情の変化を見ているだけで楽しかった。

 私は父や母がなぜ私を見放したのか、理解ができなかった。赤ん坊だった頃はこうして愛してくれていたのだろうか。

 そうなると、成長して能力がないことがわかると興味がなくなるのだろうか。


 おむつを変えたり、ご飯を食べさせたり、私ができる世話はなんでもした。もちろんユウマも同じように世話をした。

 どうにも泣き止まないときは、ビーがなだめるとすぐに落ち着いた。ユウマも私も手が離せないときは、ビーがとても頼りになった。ビーはただの魔獣ではなく、私なんかよりもよほど知性的で、相手の気持ちを読み取るのが得意だ。当然のように、ビーはフタバの兄のような、親友のような存在になった。


 とても単純な話だった。一人でフタバを育てるのは無理かもしれないが、ユウマとビーがいればどうにでもなるのだった。


 フタバは病気にもかからず、手のかからない赤ん坊だったと言っていいだろう。月日は経ち、フタバは一歳の誕生日を迎えることになった。


 フタバの一歳の誕生日ーーユウマが例の蝋燭を持ち出し、火を灯す儀礼を始めた最初の誕生日だ。

 私たちはケーキを買い、誕生日を祝った。このときはまだフタバはケーキを食べることができなかったが、成長して食べれるようになってからはフタバの大好物の一つになった。

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