第五話 虚無樹への道1
私は焦っていた。
ユウマは魔王に会おうとしている。魔王に会って、魔族の侵攻を止めるように説得を試みるだろう。
しかし、魔王がそれを受け入れることは決してない。ユウマが魔王を討伐することを考えず、ただ説得を試みるだけだとしたら何が起こるか。
魔王は問答無用にユウマを攻撃するだろう。
ユウマがこの地上で最も強いと信じて疑わなかった。しかし、今回の相手は魔王だ。
ユウマが今まで対峙した中で最も強い相手であることは間違いない。それに魔王には特殊な能力もある。
万が一ということもあり得るのだ。
ビーにとって負担になることはわかっていたが、ユウマに追いつくためにはどうしてもビーの脚力が必要だった。
ビーも事態の深刻さを認識しており、私を乗せて可能な限りの速さで走り続けた。
次第に速度が落ちてくると、水場を探してそこで休憩を取り、残りも少なくなってきてしまった、ビーのおやつ袋の干し肉や焼き菓子を食べさせた。
ビーの足が痙攣し始め、動けなくなると、ビーに体を小さくさせ、今度は私がビーを抱えて走った。
昼も夜もなく、休んでは進む、を繰り返した。
そうして、ひたすら国境沿いの道を東へ向かった。
私もビーも、疲労は極限に達していた。
朦朧とした意識の中、気づくと周囲は木々に囲まれていた。
私はいつこの森に入ったのかまったくわからなかった。まるで幻惑魔法にでもかけられたようだ。
これがエルフ大森林だろうか?
ヒルダの紹介状を握りしめた。
もしここがエルフの大森林なのであれば、エルフ族がいるはずだ。
突然、何かがこちらに向かって飛来してきた。デスブリンガーを抜いて素早く振った。
折れた矢が地面に突き刺さった。攻撃されたようだ。
エルフ族は警戒心が強いと聞く。
魔獣を連れた魔族が侵入してくれば、問答無用で攻撃するだろう。
意識が混濁してきている。攻撃続けば、いつまでも防ぎきれないかもしれない。
「私は敵ではない!」
私はあらん限りの力で大声で呼びかけた。
矢が腕を掠めた。
次の瞬間、意識が途切れた。




