表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
天と地と  作者: aaa_rabit
第四章
66/72

水面下の動き

ほんっとうに、大変長らくお待たせ致しました!

下町の住人よって運ばれた子供達を見た黄那は、当然ながらひどく驚いた。彼は元、侍医と呼ばれる立場にあり、嘗て病弱とされていた第七王子の担当医であった。謎の奇病を解明出来ず、王族の命を守れなかったとして、早々に王宮から閉め出されたのだ。元より国王から是非にと請われて王宮へと伺候した身、根っからの医者である彼はこれ幸いと下町に戻ってきたのである。 しかし、彼が追い出されたのは、もう一つ理由があった。


『王子の病に酷似している』


 一通り診断した彼は、難しい顔で子供達を見下ろした。そう、彼はあまりにも優秀すぎたのだ。王子が病弱なのではなく何か人為的なものよると見抜き、更には犯人が誰であるかも知っていた。当然ながら彼は直ぐさま上司に訴えた。ところが結果は、今の彼の状態を見れば一目瞭然だろう。


『まさか自力で逃げてきた訳でもあるまい。となれば罠か……』


 だったら何のために?


 こうして一人考えたところで、お世辞にも世渡りが良いとは言えない彼には分かるはずもなかった。彼は医者だ、毎日人助けすることが彼の生き甲斐であり、その範囲外にはとんと疎いのである。実際、当時の自分が殺されずに済んだのも疑問を持っていた一部の人間達による手引きのお陰で、そうでなければ今この場にはいないだろう。と、友人に言われて初めて知ったくらいだ。それ程に興味が薄かった。いや、周りを見ていなかった。


 それを痛感して以来、多少は外の情勢にも興味を持つようになった黄那だが、やはりこうした状況ではどう動くべきなのかが分からない。


 からんと、乾いた音を立てて扉が開かれる。


 朝から患者の多いことだ。


 億劫そうに立ち上がった黄那は、入り込んでくる太陽の光に眩しげに目を細めていたが、その人物を認めるなり目を大きく開いた。




『事情は判った。だが、俺にも民の安全を守る役目があってな。簡単には動けんぞ』


 憲兵隊でも最上位の者に与えられる徽章を胸に付けた男は、ふんぞり返ったまま答える。対する理経といえば、害した様子もなく、寧ろ満足げに頷いて見せた。


『だからあんたに頼みたい。いざという時、守れるようにな』

『あの鼻垂れ坊主が言うじゃないか。俺を利用するってか』

『利害の一致、の間違いだろう?根本は同じだ』

『少し違うな。俺たちにとっちゃ国のトップなんざ誰でも構わん。日々の生活が保証されればな』

『戦になればそんな悠長な事言ってられるか?あんたも国境沿いの進軍については知ってるはずだ。本当に勝てると思っているなら俺は今、この場であんたを排除するぜ』

『やるか?』


 一触即発の緊張した空気が流れる。炎に惹かれてやって来た虫がじじ、と音を上げて身体を灰にしながら落ちていく。哀れな屍がまた一つ増えた。それを合図にして、双方は腰に伸びた手を離した。室内の隅で見守っていたリアナは、交渉成立と見て取ると、自らの存在を証明するかのように暗がりから一歩踏み出す。


『そろそろ宜しいですか?』

『ん?ああ、悪いな』


 リアナが気配を断っていたことに若干の警戒を滲ませながらも、篠目は人好きのする顔で小指を立てて見せた。


『別嬪な孃ちゃんだなぁ。坊主のコレか?』

『違う。彼女はただの協力者だ』

『協力者ぁ?』


 疑わしそうな目で見る篠目に、リアナは笑顔で言及を避けた。ただでさえ時間が押しているのに、これ以上のタイムロスは勘弁したい。どうせリアナ達、ヴァーリアス帝国側のいないところで彼等も独自に話し合いを設けているはずだ。彼らの存在を明かすか明かさないかは、理経次第である。


『ひとまずは篠目殿、昨日早朝に起きたことは既に黄那殿から聞き及びですね?』

『ああ、まぁな。……って、あれも坊主の差し金か!?黄那とも既に接触済みってわけか』

『先生の協力無しには計画が成功しないからな』

『……あいつ馬鹿だからちゃんと守ってやれよ。じゃないと、俺は坊主に協力する気はない』


 意外な組み合わせであるが、黄那と篠目は幼少時からの付き合いで職は違えど彼等は親友である。王宮に上がると言う黄那に真っ先に反対したのも篠目だった。彼には黄那の自身や周囲に対する無頓着ぶりを知っていたのだ。そして彼の危惧した事態は起こり、黄那は命からがら逃げ出した。


『安心しろ。先生には護衛がついてるし、それに……』


 彼等が用意した隠れ家の一つで、嬉々として解明に取り組んでいる黄那を思い出し、遠い目になる。情報交換をしているうちにヴァーリアスの竜騎士の一人と意気投合し、着実にマッドサイエンティストならぬマッドドクターへの道を歩みつつあるとは言えない。


 言葉を濁したことで剣呑とした視線を向ける篠目に、楽しそうだった、と一言添えてそれ以上は口にすることはなかった。


言い訳は色々と活動報告で言わせて貰います。

ただ、今後の更新も不定期になるかと思います。未だにお気に入りして下さっている方、見捨ててなくてありがとうございます。

何とか最後まで書き上げたいと思いますので、今後ともよろしくお願い致します。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ