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天と地と  作者: aaa_rabit
第三章
27/72

とある公爵家に務める侍女より2

侍女は見た!のパート2です。

 皆様お久しぶりです。リアナ様の侍女、ユーナでございます。

 ただいま私たちはマニアでなくても垂涎ものの光景を目にしております。眼福でございます。お嬢様の可愛いらしい寝姿だけでなく、何と兄君であらせられるリューグ様の寝姿までも拝しているのですから。


 お嬢様と若君のご年齢から考えるとご兄弟でお休みになるのは少々、いえ、かなりいけないことだと思うのですが、この神々しいまでの美しさを前にして邪魔をすることなど出来ませんとも。

 昨晩は夜会に出ておられてお二人とも疲れているのでしょうが、そろそろ起こさなくてはなりません。


 リューグ様の寝起きの悪さは侍女達の中でも折り紙付きなので、誰が起こすかと押しつけあ……コホン、討論していると、突然廊下が騒がしくなりました。

 何事かと見ようとしたところで扉が蹴破らんばかりに開け放たれます。


「リューグ!お前だけずるいぞ!」


 公爵様の大音声が響き渡ります。私達は慌てて頭を下げました。普段は温厚な公爵様がここまで怒るのは非常に珍しいのです。勧んで火の粉を被りたくはありません。


「朝から騒々しいですよ父上」


 不機嫌そうに寝乱れた髪を掻き上げられる若君の姿は大変麗しいです。お嬢様も公爵様の声に驚かれたようで、若君の手を借りながら身体を起こされたところでした。


「儂だってリアナと一緒に寝たかったのにずるい!折角の親子水入らずの邪魔をするでない」

「それを言えば私とて兄妹水入らずなんですよ。大体父上に添い寝などされた日にはリアナが圧死してしまう」

「なっ!なぜそれを……」

「母上から昔聞きましたよ。父上の寝相はそれはとてもとても」

「それ以上言うな!」


 くぁと可愛らしく欠伸を漏らしたお嬢様は私共の所へ来られました。どうやら相手にするだけ馬鹿馬鹿しいと思われたのでしょう。そこには私たちも激しく同意いたします。


「おはよう、みんな」


 目を擦っている様子からまだ眠いのでしょう。その仕草のなんと可愛らしいこと。公爵様やリューグ様が度々抱きしめて頬擦りする気持ちが良く判りますわ。


 既に浴室の準備がされているのでお嬢様をつれて浴室へ。そして耐えきれずに三人が鼻血を噴いて倒れてしまいました。私とてお嬢様の裸を直視できません。

 少女と女性の危うさを見事に兼ね備えたお嬢様の裸は背徳的な何かを感じずにはおれません。同性の私達ですらこの有様なのですから、将来お嬢様の夫となられる方はさぞ理性を試されることでしょう。

 あら?その場合は欲望に従えばいいのかしら。羨ましいですわね。


 こほん。少々興奮しすぎました。

 お嬢様の真珠のようなお肌を美しく磨いた後は朝食の席へ。身支度を完璧に調えたリューグ様と公爵様がお嬢様を迎えます。

 久しぶりに朝食を共にするとだけあって公爵様の顔の筋肉が緩みっぱなしだったのは侍女として見ない振りです。


 さて。ここは皇都の公爵家別邸なのでいろいろと勝手が違います。けれどお嬢様の日常はあまり変わらないようです。いえ、前より悪化したのでしょうか?

 いくら敷地内とはいえ、私達を連れずにどこかへ消えてしまいました。正式に公爵家の騎士になったシャックス、いえ、シャックス様がおられるので大丈夫でしょうが、不安はつきません。


 夕暮れ時に突然お嬢様がお戻りになられたかと思えば、大量のお菓子を渡されました。それらは全て、皇都でも有名な菓子屋のマークでした。

 どうやら外へお一人でお出かけになったようです。監督不行き届として私達が怒られてもおかしくなかったのですが、リューグ様はあくまでお嬢様を叱責されておりました。


「貴族の令嬢が供もつけずに一人歩きとは、嘆かわしいよリアナ。約束を破るのかな?」


 いつになくリューグ様は怒っているようです。日頃お嬢様には見せない冷たい眼差しは、叱責を受けていないはずの私達の心臓を凍らせそうです。


「破るつもりはありません。ですが」

「理由はどうあれ、君が我々の期待を裏切ったことに変わりない」


 約束とは何のことでしょうか?それにしてもこれ程までに冷たい方だとは思いませんでした。噂に聞く氷の貴公子の一端を垣間見た気が致します。


「若君、お待ちを」

「お前がいながらなぜこのような醜態を晒したんですか、シャックス?リアナ、君にも失望したよ」

「お兄様!シャスはわたくしの我が儘を聞いただけで関係ありませんわ!」

「リアナは暫く部屋で反省しなさい。私が許可するまで外に出るのを禁ずる」

「お兄様!」


 聞く耳持たず。私達は若君の命令で、姫様の部屋から退出しました。ごめんなさいと謝る姫様の表情は痛々しく、とても見ていられません。

 つい若君に対して恨めしげな視線を送ってしまいます。


 あそこまで冷たく当たる必要はあったのだろうか。


 釈然としない思いを抱えながら私達は与えられた仕事を黙々とこなしました。


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