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天と地と  作者: aaa_rabit
第二章
18/72

鈍さは罪?

 一応全年齢対象なのですが、ちょっとまずい、かも?しれないです。まずいだろうと思われる方、すみませんが教えてやってください。

 ノックをして声をかけてからリアナは部屋に入った。

 今までの部屋とは違い、落ち着いていながら何処か上品な作りの内装だった。丁寧に磨かれた飴色の壁に、誰でも知っている、あの有名な画家の絵が大きく飾られている。

 ジードは中央のソファに腰掛けていたが、リアナにして見れば完全に絵画の方に興味が移っていた。衣擦れの音にようやく他人に気づいたくらいである。


 女達に教えられた通り、ワインをグラスに注いで部屋を下がろうとした。しかし背を向けたところで突然腕を引かれる。慣性の力に流れるままジードの膝の上に座ってしまった。

 きょとんとするリアナに笑ってからジードはグラスを呷る。上向かされたかと思えば口を開けられた。ひんやりしたものが唇に押しつけられ、芳醇な液体が流れ込んでくる。

 突然のことに咽せてしまったリアナの口から零れたワインをジードが舐め取った。


 今のは一体何?


 そちら方面の教育にはまだ早いと、徹底的に排除されていたために、リアナはジードの行動が判らない。ただ、触れた冷たい唇が気持ちよかった。

 許容範囲を超えてしまい茫然自失のリアナをどう捉えたのか、ジードが唇を啄む。抵抗がないことに気をよくしたジードは小さな口の中に舌を入れた。さすがに驚いたのか逃げようとする頭を後ろから押さえて強引に絡ませる。


 酸欠と突然の出来事に頭が真っ白になったリアナを助けたのはジュードだった。

 蹴り倒す勢いで侵入を果たしたジュードは唇を触れ合わせている光景を見て激怒する。腰に穿かれた剣が相手に伸びようとしたところで。


「ジュードよせ!」


 辛うじて間に合ったヴァリアスによって止められる。理性と感情で葛藤した後に、べりっと義妹を男から引き剥がした。荒く呼吸する唇は濡れて艶めかしい。咄嗟に視線を逸らしたジュードは入り口まで下がった。


「人の邪魔をしないでくれないかな、叔父上」

「やっぱりお前かジード。悪いがこいつは俺のものだ」

「僕が先に目をつけたんだけど?」

「残念だったな。あれは男で俺の専属護衛だぞ」


 えと目を丸くしたジードに満足したヴァリアスはリアナを促して部屋を出る。大人しくジュードに抱かれていたリアナは頬を撫でる風でようやく己を取り戻した。


「あれ?ここは……」

「気づいたか、リトル」

「ジュード様」


 今の自分の姿は酷くちぐはぐだ。女達によって着飾られた恰好の上に脱いだ外套をかけられ、腰に剣をつけている。気づけば馬上でジュードに運ばれていた。


「もうすぐ別邸に着くから我慢してくれ。兄上が待っている」

「リューグ様が?今日はお仕事で忙しいはずでは」

「切り上げたそうだ。お前が娼館に行くと聞いて飛んで帰ってきたんだぞ」


 憮然とした様子にリアナは首を傾げる。そもそもリアナにとって娼館=女の人が沢山いてお酒を飲むところでしかなかったのだ。

 けれど邸前で待っていたリューグに強く抱きしめられて心配させてしまったんだなとすまない気持ちになった。


「ああ、リアナ。酷いことはされませんでしたか?貴方が娼館に連れて行かれたと聞いて心臓が止まりそうになりましたよ」

「ごめんなさいお義兄様」

「リアナが謝る必要はないですよ。全てはあの馬鹿皇子と愚弟が悪いのだからね」


 辛かったら泣いて良いんだよと言われ、益々リアナは困惑する。それに気づいたのはジュードだった。


「どうしたリアナ?」

「あの、ジュードお義兄さま。私は何か悪いことをしたのでしょうか?」

「……?」

「いえ、心配させてしまったようなので処罰されるような事をしてしまったのかと……」


 色恋沙汰とは全くと言っていいほど無縁だったリアナにとっては至極当たり前の確認だったのだが、兄弟は顔を合わせて目で会話していた。


 どういう事です、兄上

 リアナの教育課程でそういった類は徹底的に避けてきました

 将来的に考えてそれは、

 リアナは永遠に私達の妹でいればいい。違いますか?

 ……そうだな


 意見の一致をみた二人は頷いた。このまま言及せずにおこうと。かくて誤認したままリアナの娼館騒動は呆気なく幕を閉じた。



 「父上」

「おやお帰りジェラルド。夜遊びも程々にね」

「ええ。ですが今宵は面白いことがありまして」

「なんだい?」

「噂の綺麗な小鳥が一匹迷い込んできたんです。飼い主は小鳥に気づいていないようですが」


 父親と同じ顔をした青年は楽しげに笑った。父もまた満足そうに頷く。


「気に入ったみたいだね」

「とても。なかなか美味しかったですよ」

「もう味見をしたのかい?困った子だ」


 ワインをグラスの中で弄びながら脳裏に小鳥の姿を思い浮かべる。無垢で何も知らない可愛い小鳥。


「あれは何も知らないようですね。苛め甲斐がありそうです」


 本当に楽しそうな息子に珍しいと目を細める。環境か、はたまた性格のせいか何事にも冷めている息子がここまで興味を見せるとは思わなかった。

 近いうちに会わせてみようか。期待に想像を膨らませながら、リュディアスは妻の待つ寝室へ向かった。


11/28改稿

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